国内への影響 最小限に止めよ

不安解消、貸し渋り対策など急げ

金融危機

 「100年に1度の危機」――。米連邦準備制度理事会FRB)のグリーンスパン前議長は、サブプライムローン低所得者向け高金利型住宅ローン)問題に伴う金融市場の混乱を評して、こう述べている。

 米当局が厳戒態勢を続けるのは当然のこと、政府・日銀には、わが国への影響を最小限に食い止めるべく、迅速かつ的確な政策運営が求められる。

 米証券大手リーマン・ブラザーズ破たんの衝撃は「対岸の火事」ではすまされない。東京市場でも一時、金融機関が資金調達を急いだ結果、短期金利が上昇。金融収縮を防ぐため、日銀は資金供給に踏み切った。米国の住宅価格下落が止まらない限り、サブプライムローン問題による混乱は続くと見ざるを得ず、状況は依然予断を許さない。

 また、日本経済の屋台骨を担う中小企業に対する貸し渋りも懸念される。このため、何よりも資金繰り安定化のための各種支援策を総動員するなど、中小企業への痛みを最小限に和らげる施策に全力を尽くさねばならない。

 金融の混乱が米国の実体経済にまで及び、世界経済の不透明感も高まっている。円高・ドル安の進行は輸出産業に打撃を与える。このほか、国内金融機関が保有するリーマン向け債権の影響の把握も急ぐ必要がある。

 一方で、経営難に陥った米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)には、FRBによる最大850億ドル(約9兆円)の融資が認められた。AIGは総資産が1兆ドルを超え、130カ国以上で保険商品を提供する巨大保険会社。破たんした場合の影響は関係者でも想像できないほどだという。

 安易な救済で金融機関のモラルハザード(企業倫理の欠如)を招くことは許されないが、危機の連鎖を防ぐには妥当な判断だったといえよう。とはいえ、リーマンとAIGであまりに対照的な米当局の政策判断には、ダブルスタンダード二重基準)との批判も根強い。十分な説明責任を果たす必要はある。

 世界経済の底流にある潮目の変化も見逃せない。ここにきて、マネーは収縮。世界経済の減速懸念などから原油価格は下落が続き、各国の金融政策の軸足は物価から景気に移りつつある。景気への配慮が必要な状況ということでは、日本も決して例外ではない。

あまりに大きな教訓

 日本の税収を上回る多額の負債を抱えた証券大手の破たんや、リスクが高い証券化ビジネスに重点を置き過ぎた保険会社への救済が示す教訓はあまりにも大きい。

 近年のマネーの動向を見れば、証券化で世界中に広くリスクを拡散させた上、信用収縮の結果、株式、債券市場からマネーが流出。原油、食料品価格の高騰を招き、途上国での飢餓や暴動を誘因した。投機マネーの功罪は、そう遠からず、良識による審判を下されるべきだ。
(公明新聞:9月19日)