「なぜ議会改革は進まないのか・JIAMセミナーを受講して①」

「議会改革」とは何なのか?
なぜ「議会改革」が必要なのか?

バブルの崩壊後、国は成長の時代から成熟の時代へ、富(予算)の分配から負担(不利益)の分配へ、1995年の地方分権推進法制定により、国主導から地方分権時代に入りました。

それまで国の下請けのようだった地方自治体は、2000年の地方分権一括法の施行により、その地方の実情、裁量によって主導的に自治が行えるようになりました。

施行前までは、国の指図によって行われる業務に関しては、議会の権限はおよばなかった訳ですが、施行後は地方自治体が主体的に自治を行うこととなり、議会による審議・決定(議決)は、より重要となりました。

議会の主な役割と言えば、執行側(市長、市行政)の業務が正常か、適切に行われているかの監視、執行側の提案する予算、政策に対して、その地域、時世の多様な民意を反映させ、住民の生活・福祉の向上を図っていくこと、また地域の問題課題に対して、住民に「代わって」調査、審議し、解決改善をしていくなど多岐にわたります。

地方分権から20年、団体自治の推進が成されてきたわけですが、昨年(2014年)に「まち、ひと、しごと創生法」が制定され、団体自治からさらに住民自治の時代に入ったわけです。

全国的な問題として、少子高齢化、人口減少の問題があり、地域によっては人口、産業・経済、教育、福祉、医療の格差があります。地方創生によって、この地域の問題・課題が解決されなければ、活力がなくなり、財源が減少し、結果的には自治体が消滅することも現実に起こるとされています。

地方創生に向けて、住民自治が進んでいくとき、住民の意思を反映させる機関は何か?これこそが「議会」であり、その責任と役割を担っていくのが議会を構成する「議員」であると思います。

しかし、現在の「議会」「議員」に対する住民の意識は、残念ながらそれほど高いとは言えません。

今回のJIAMのセミナーの冒頭、早稲田大学名誉教授・北川正恭氏の講義では、こういった背景に沿って、地方自治の現状と議会改革の動向について講義がありました。

地方分権一括法の施行により、地方がより地域の情勢に即した地方行政が行われるよう「地方自治法の改正」があり、全国的にも「議会改革」が進んだとされていますが、果たして当時の「弥富町」の議会は、それをどのように受け止め、改革に結びつけたのでしょうか。

残念ながら、早稲田大学マニフェスト研究所・中村健事務局長の講義では、住民の「議会」の認識、イメージは悲しい結果との報告がありました。

同研究所の調査によりますと「(議会が)何をしているのかわからない」が56.1%。
「いてもいなくても同じだ」が34.9%。「地域や団体などの利益を考えている」が24.7%と、散々です。
これを読みながら「ウンウン」とうなずいてる方もおられるかもしれません。

しかし、このままでは住民自治は進まず、市長の裁量以外、多様な民意は行政に反映されなくなってしまいます。

そうあってはならないと、弥富市議会でも「議会改革」をやろうということになったわけですが、結果として行ったことは「議会基本条例の制定」「報酬の削減」「定数の削減」「タウンミーティング」「ネット配信」等です。

残念ながらこれらは全て形式であり、手段に過ぎません。

セミナーでは先進市事例として岐阜県可児市、北海道芽室町の取組が紹介されました。

「改革と言っても、それは本来、議会、そして議員がやらなければならない事をやる、ということです」と芽室町議会・広瀬議長は仰いましたが、正にその通りだと思いました。

じゃあ、その「やらなければならない事」は何なのか?

議員は住民を代表する代議員です。
住民に代わって行政を監視し、無駄を省き、地域の問題課題を広角的に調査し、解決改善に尽力し、多様な民意を行政に反映し、住民の幸せと福祉の向上のため働き尽くすのが使命です。
これを成すためには、住民と常に積極的に接していく行動、あらゆる手段を講じてでも、その機会をつくり広げていくこと。あらゆる課題問題に対応するため自己研鑽を積むこと。常に双方向の信頼関係を保つこと・・・

これを条例化したのが「弥富市議会基本条例」です。

また「議会改革」が成しえた状況というのは、分かりやすく言えば住民から
「議会が決めたのなら間違いない」
「議会の言う事なら信頼できる」
「議会に相談してみよう」と当たり前のように言っていただける存在になることだと思います。

セミナー受講の前に、「議会改革が進まないのは問題課題が共有できないからだ。これを共有するにはどうしたらいいのか。基本条例を活かすにはどうすれば良いのか」と仮説を立て課題を持って参加し、質疑応答の時間に伺ってみました。

可児市の議会改革を進められてきた川上前議長から「いくら素晴らしい基本条例を作っても、運用規定、運用規則とセットでなければ作用しません。標語に過ぎません。もう一度、しっかりとしたプロセスを経て、再トライしてみては」と厳しくも的確なアドバイスをいただきました。

まったくその通りだと思います。弥富市議会の取組は、あくまでも形式的な議会本位の取組だったなと、涙が出そうになりました。

弥富市には、住民と行政が一体となって解決しなければならない問題がたくさんあります。

災害に備えた「活きた防災」もそうですし、産業経済の活性化、教育の充実、医療、福祉、どれも弥富市の発展のために果敢に取り組まなければなりません。

改選の近い弥富市議会。新たな取り組みは改選後の議会に託すしかありません。
これもまた、一つの争点になるのではないでしょうか。