ちょっと教えて!ニュース早分かり「産科医療補償制度」

産科医療補償制度
脳性まひ児・家族の負担軽減
公明が後押し再発・紛争防止にも期待

赤ちゃんが分娩時の事故で重度の脳性まひとなった場合に、分娩機関の過失がなくても3000万円を補償する「産科医療補償制度」(無過失補償制度)が来年1月1日からスタートします。

 病院、診療所、助産所など分娩機関は、こうした補償金の支払いによる損害を担保するため、同制度の運営組織である日本医療機能評価機構が契約者となる損害保険に加入。補償対象の脳性まひが発生した場合、分娩機関に保険会社から保険金が支払われます。
同制度の目的は、脳性まひ児とその家族の経済的負担を減らすとともに、脳性まひ発症の原因分析を行い、その結果を分娩機関と家族双方に説明し、同種の医療事故の再発を防ぐことにあります。

 また、訴訟リスクが高いと指摘される産科ですが、同制度により医師と妊産婦・家族の紛争防止も期待されます。
補償対象は、通常の妊娠・分娩にもかかわらず脳性まひとなった場合で、出生体重が2000グラム以上、かつ、在胎週数33週以上で、重度の障がい(身体障がい者の等級、1級・2級に相当)があることとなっています。

 ただし、先天的な要因があった場合などは対象外になります。

 補償金額は合計3000万円です。補償制度の対象と認定された時点で一時金の600万円が支払われます。残りは分割金として年間120万円が20年間、支払われます。なお一分娩当たりの保険料(掛け金)は3万円です。

 一方、政府は同制度導入に伴い、出産時に妊産婦に対し公的医療保険から支払われる「出産育児一時金」を、現行の35万円から38万円へと3万円引き上げる方向で検討しています。
これは、同制度に加入した医療機関が、出産費用に保険料分(3万円)を上乗せして妊産婦に請求するとみられるため、相当額を手当てするためです。

 ただ、同制度に加入していない医療機関で出産した場合は、現行の35万円に据え置かれる方針です。
同制度に加入している医療機関は95・5%(11月11日現在)で、厚生労働省は「加入100%をめざす」としています。

 なお、厚労省は制度内容について「遅くとも5年後をめどに見直しを行い、改善すべき点は改善する」としています。

 公明党は医療事故に関する紛争が増え、訴訟リスクが高まったことが医師不足の一因として指摘されている問題を受け、「医療事故に係る無過失補償制度とADR(裁判外紛争処理)制度に関する検討ワーキングチーム(WT)」を2006年9月に設置。安心と安全の医療をめざして議論を重ね、同制度実現をバックアップしてきました。
(公明新聞:11月18日)