定額給付金、をもらうと、所得税がかかるの?
本日、市民の方から「定額給付金、をもらうと、所得税がかかるの?」とのご質問をいただいた。2次補正予算案と関連法案の提出は来年早々となるため、確実にこうだと言えるのは法案成立後になるが、考え方としては以下の通り。
定額給付金、夫婦2人と18歳以下の子供2人、の4人家族の場合には、世帯で6万4千円受給することになりそうだ。
では、この給付金に対する税金の取扱いはどうなるのだろう?
たとえば、給与収入が2500万円の高額所得者だった場合には、課税所得がおそらくは最高階級の1800万円を超えることから、40%の所得税率が課される、課されている、ことになる。
そこに、この64000円をもらった時に、その40%である25600円が、所得税として国に納税することになるのでは、およそもらった意味が消失してしまう、ようにも見えるが、どのようになるのか。
定額給付金、は給与所得ではない。
雇用契約などに基づく、勤務・役務の対価であるという性格は、「ない」ということは、おわかりいただけると思う。
所得税は、10種類の分類所得を定めて、その所得分るごとに収入から所得を計算する方法を定めている。
おさらいすると、
利子、配当、不動産、事業、給与、譲渡、一時、雑、山林、退職
の10種類である。
この中で該当しそうなものは、一時所得か、雑所得である。
一時所得の定義は「(利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡所得以外で)営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう」こととされている。
政府見解では、定額給付金は、所得分類としてはこの「一時所得」に該当するとしている。
従来一時所得とされているものを見てみると、
生命保険契約等に基づく一時金、
懸賞の賞金等、
競馬の馬券の払戻金等
などである。
さて、政府見解通り一時所得として取り扱われる場合には、原則的な取扱いでは、そのために支出した必要経費及び各年50万円の「一時所得の特別控除額」(必要経費と合計して50万円が上限)を控除することができ、さらに、課税所得を合計する際には、2分の1に軽減されることになっている。
今回の「定額給付金」には、必要経費は存在しない。
従って「50万円」を控除すると、マイナスは起こらないので、一時所得としてはゼロになる。
従って、たまたま、前述に例示したような一時所得が、定額給付金を受給する来年(平成21年)に50万円以上得ている場合には、50万円の控除額を控除してもなお、残額が残るので、残額の2分の1の金額は、課税所得に算入されるので、原則、冒頭で申し上げたような課税が起こるということになる。
以上は、たまたま一時所得、たとえば生命保険の一時金などが50万円以上ある場合に限られるので、そういった所得がない、ほとんどの場合には、50万円の特別控除額によって、所得税が課されることは、まずない。
しかし、前述のような一定以上の一時所得を有する人もあり得ることから、自民党税制調査会では「定額給付金」を非課税とする特例措置を行う方針を固めた。
やるとすれば、租税特別措置法、の立法、ということになるので、国会で法案を通す必要がある。定額給付金の法案とセットで提出するということと想定される。
定額給付金、もはや耳慣れてしまったが、丁寧なやり方をするためには、政府も意外と大変である。
省庁から出向して法案の対応をされている皆さん、本当にお疲れ様です。
(税理士 久川秀則の税務ニュースレター)より転載