定額給付金 ここがポイント

山口那津男政調会長に聞く

家計を支援する定額給付金の実施を盛り込んだ2008年度第2次補正予算案は、週明け19日から参院予算委での審議がスタートします。そこで、定額給付金への疑問や批判に対し、公明党山口那津男政務調査会長参院議員)に答えてもらうとともに、実施に備えて地方自治体などで活発化し始めた給付金活用の具体例などを紹介します。


Q なぜ定額給付金になったのか?

A 形を変えた「減税」。低所得者に配慮し給付金に。生活支援と消費喚起による景気下支えが目的。「給付つき減税」は世界の潮流


定額給付金は、形を変えた「減税」です。公明党は当初、「定額減税」を主張していました。しかし、景気悪化の影響が最も大きい低所得者課税最低限以下の世帯)に恩恵が及ばない上、所得税と住民税の減税時期がズレて効果が分散してしまうため、給付金方式で一括実施することにしました。

財源は、新たな借金(赤字国債の発行)にはよらず、特別会計の準備金をやりくりして捻出しますので、ある意味では、国の税収を国民に戻す“定額還付金”と言った方が分かりやすいでしょう。

定額給付金は、景気悪化と物価高騰に苦しむ国民の生活を支援するとともに、個人消費を喚起し景気を下支えすることが目的です。

こうした景気対策の手法は今や世界的な潮流です。欧米主要国やアジア諸国では、日本の定額給付金と同じ考え方の「給付つき税額控除」【用語説明別掲】の制度を導入しています。

評論家の宮崎哲弥氏も「日本では異常なバラマキのように思われているが、フランスでもオーストラリアでも、アメリカのオバマさん(次期大統領)も、(定額給付金に)似たような政策を提示している」(14日放映の日本テレビ系番組)と述べています。

アメリカでは次期オバマ政権が1人当たり500ドル(約4万5000円)、夫婦で1000ドル(9万円)の税金を払い戻し、納税額が1000ドルを下回る世帯には補助金も支給する方針です。

実は、日本の野党の民主党も、こうした「給付つき税額控除」の実現を主張し、社民党は「定額減税」を政策に掲げています。それなのに、「反対」「廃止」と主張するのは、「政策より政局を優先」の証拠です。

【給付つき税額控除とは】
課税される人には税額控除して減税するとともに、控除し切れない場合や、減税の恩恵の及ばない課税最低限以下の世帯には給付を行う仕組み。


Q 「2兆円の財源を他に回せ」との主張には? 
A 総額75兆円の景気対策には、雇用、中小企業、子育て支援など幅広い施策を網羅。給付金はその一つ


定額給付金の財源を、雇用や中小企業対策、子育て支援、地方活性化、学校の耐震化などに回すべきだという主張があります。しかし、これらの施策は政府・与党で決めた総額75兆円の経済対策の中にしっかり盛り込まれています。定額給付金も、その中の一つです。

例えば、2008年度第2次補正予算案には、自治体への雇用機会創出への基金創設や離職者への住宅・生活支援、中小企業融資への保証・貸出枠拡大など、09年度予算案・同税制改正案にも、雇用保険料引き下げや非正規労働者への雇用保険適用拡大、出産育児一時金の増額などが盛り込まれています。

民主党など野党の「定額給付金は必要ない」という主張は、「国民の生活を支え、家計を助ける減税は必要ない」と言っているのと全く同じです。


Q 経済効果への疑問の声など批判があるが?

A 必ず消費に回り、大きなGDP押し上げ効果。「貯蓄に回る」の批判は庶民の生活実態を無視


定額給付金は消費に回り、景気下支えの経済効果を十分に発揮します。

民主党のある幹部は“給付金は低所得の人ほど貯蓄に回るだけ”などと批判しましたが、これは貯蓄を取り崩して生活費に充てなければならない庶民の生活実態を無視した暴論です。

最新調査では、収入のうち貯蓄に回る割合(貯蓄率)は、過去最低の2・2%です。収入を貯蓄に回す余裕などなく、定額給付金の多くが消費に回るのは確実です。内閣府は、定額給付金には実質GDP(国内総生産)を0・2%押し上げる効果があると推計しています。

一方、野党に加え、マスメディアまでが定額給付金への批判を強めていることについて、評論家の田原総一朗氏は、「違和感を抱かざるを得ない」(週刊朝日 1月23日号)と疑問を投げ掛けています。田原氏は、給付金の評判の悪さを「野党やマスメディアが盛んに批判したために、少なからぬ国民が、給付金には胡散臭さを示さないと具合が悪いと思っているのである」と分析し、「私が各地で講演して『給付金は評判が悪いけど、ホンネは迷惑ではないですよね』と言うと、例外なく大きな拍手と笑いで包まれる」と紹介し、「野党はいったい何を根拠にして『定額給付金は国民に迷惑』と決めつけているのだろうか」と指摘しています。

確かに産経新聞の調査では、実際に給付金が決まれば「給付金を受け取る」と答えた人は84・8%に上ります。

今後、理解が深まるにつれ、定額給付金への評価が広がっていくでしょう。



地域経済振興へ“知恵比べ”
割増つき商品券、セールなど


定額給付金を地元での消費に結び付け、地域経済の振興に役立てようと、全国の自治体で、さまざまな取り組みが始まっています。

例えば、長崎県佐世保市定額給付金が実施される際、1万2000円で1割増しの1万3200円分の買い物などができるプレミアム(割増)つき商品券を発行する計画です(差額は市と地元経済界が折半)。同市議会公明党が昨年12月の本会議で定額給付金を地域での消費拡大につなげるよう訴え、市側が計画を打ち出しました。

東京都港区の商店街振興組合連合会も、3月に1割のプレミアムつきの「港区民元気だすぞスマイル商品券」を発行します。発行総額は3億3000万円で、このうち割増分の3000万円は全額区が負担します。

一方、広島市川崎市では、給付事務の人員確保を失業者対策に活用する計画です。

また、個々の企業でも給付金セール実施、“高齢者夫婦の旅”4万円パック、新社会人1万2000円スーツ売り出しなど、多種多様な“戦略”が検討されているともいわれています。

このように給付金が実施されれば、各自治体や商店会などで、いかに消費喚起につなげ、地域経済を潤すかという“知恵比べ”が活発化します。地域経済の 振興へ、公明党地方議員の“活躍の舞台”が訪れるといえます。
(公明新聞:1月18日)