報酬増を機に人材の流れを

保険料の抑制措置時に環境整備急げ

安心の介護社会へ

 超高齢化に突入したわが国では、介護サービスを提供する人材の育成・確保・定着を図ることが大きな課題になっている。介護報酬が3%アップされる来年度(2009年度)は、その基礎を築くチャンスといえよう。

 2008年度第2次補正予算の関連法が4日成立し、介護報酬の引き上げに伴う、介護保険料の上昇分を抑制するための財源が確保された。介護環境を整備していく上で大事な措置である。この間に介護保険制度に対する国民の理解をさらに深める必要があろう。

 00年4月からスタートした介護保険制度は、介護サービス事業者に対し、利用者へのサービス提供の対価として介護報酬を支払う。原則として報酬の1割を利用者が負担し、9割は保険料と税金で賄う仕組みだ。

 介護保険制度のサービス利用者は、制度発足時の149万人から、6年半後の06年10月には354万人と、約2.4倍も増加。厚生労働省の推計によると、14年には約500万人まで増えるとされる。

 利用者が増えればサービス料(給付)の総額も当然増える。これに対し介護報酬は過去2回の改定でいずれも引き下げられた。にもかかわらず、65歳以上の第1号被保険者が支払う保険料の全国平均は2911円→3293円→4090円と上昇し続けている。報酬引き下げなどで給付を抑制しても、保険料を上げなければいけないほど利用者が急増しているということだ。

 それでもサービスを利用している人は第1号被保険者の2割以下にとどまる。つまり8割以上のお年寄りは保険料を納めてもサービスは受けていない。不況の影響で生活が一層厳しくなっている現在、これ以上の負担増は、なかなか理解を得られないだろう。


急がれる待遇改善

 こうしたなか、介護従事者の待遇改善は“待ったなし”の状況に来ている。介護従事者の離職率は2割以上に上り、離職者の4人に3人が採用後3年未満で辞めている。早く辞めてしまうのは待遇が悪いことにほかならない。厚労省の調査では、介護施設介護員(男性)の年収は40代後半で約360万円と、製造業と比べ350万円も低い。これでは家族を養うのは難しく、介護業界で男性の“寿退社”が珍しくないといわれるのもうなずけよう。

 来年度の介護報酬アップを足掛かりに、介護従事者の待遇改善が進み、不足する介護人材が質・量ともに増大する流れが築かれることを強く望みたい。

 今回の緩和措置では、報酬アップに伴う保険料増加に対し、09年度は全額、10年度は半額が補てんされる。ただ、現役世代が誇りと情熱を持って介護サービスを提供し、お年寄りがそれを安心して享受できる介護社会を確立するには、それなりの保険料や税金の負担が避けられないのも事実だ。今後、慎重に議論を積み重ね、十分な社会的合意を生み出していくことが必要となっている。
(公明新聞:3月9日)