脳脊髄液減少症

本日、脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の今井理事より、お話を伺う機会がありました。
皆さんは「脳脊髄液減少症」という病気をご存知でしょうか?
交通事故やスポーツなどで外傷を受け、硬膜から脳脊髄液が漏れ出してしまい、脳神経系に障害を起こす病気です。症状としては、めまい、頭痛、視力障害、倦怠感、記憶力低下、集中力低下など日常生活に支障をきたすとされています。
外傷はすっかり治って現場復帰しても、上記のような症状が起こり、以前と同じ事が出来なくなってしまいます。見た目が普通なので、ただ単に「怠けている」とか「精神的なもの」などと判断され「ひきこもり」や「不登校」になってしまわれた例も少なくないようです。
以下は以前、公明新聞に満載された記事です。

関心高まる 脳脊髄液減少症むち打ち症の主な原因
/有効なブラッドパッチ療法/約7割の患者が改善


むち打ち症の主な原因として、脳脊髄液減少症への関心が高まっている。むち打ち症患者に脳脊髄液の漏れが確認され、ブラッドパッチ療法を行うことで症状が改善したとの報告が相次いでおり、患者は一筋の光明を見いだしている。脳脊髄液減少症の治療の現状と、それを取り巻く各界の動向、公明党の取り組みをまとめた。


 『治療の現状』  
 『患者に見えた希望の光』


 むち打ち症患者に希望の光が差し込んでいる。
 数年前、一人の医師が多くのむち打ち症患者の腰椎部から脳脊髄液が漏れていることを発見し、漏れが起きている部位付近に患者自身の血液を注入し、髄液漏れを止める治療法(ブラッドパッチ療法)を試みて治療に成功した。
 そして今、この発見と治療法に理解を示す医師の輪が広がっている。
 「鞭打ち症患者支援協会」(中井宏代表理事)が全国32カ所の医療機関を対象に実施したアンケート調査<表参照>によると、2005年5月15日までに2455人の患者にブラッドパッチ療法が行われ、73・5%が改善傾向を示し、42・4%が社会復帰を果たした。
 特に、事故などで発症してから2年未満に治療した事例に絞ると、改善率は78・9%に達した。


 『各界の動向』  
 『20都府県で意見書採択』


 それだけの治療実績を挙げつつも、一般の医療現場では、むち打ち症の原因としての脳脊髄液減少症とその治療法であるブラッドパッチ療法への認知度は低い。関係学会の評価も分かれている。
 しかし、各界の動向に変化が表れている。
 地方議会では現在までに、20都府県議会で脳脊髄液減少症の研究促進とブラッドパッチ療法への保険適用などを求める意見書が採択された。
 国も、3月8日の参院予算委員会で、公明党渡辺孝男氏の質問に答えて、脳脊髄液減少症の研究に積極的に取り組む姿勢を初めて示した。
 この質疑はマスコミでも大きく取り上げられ、「『髄液漏れ』に研究費」「『被害者救済の突破口』 患者ら高まる期待」(毎日新聞)などと見出しが躍った。
 また、日本脳神経外科学会は今年10月に開く総会で、脳脊髄液減少症を初めて研究テーマとして取り上げる。
 司法の場では従来、交通事故と脳脊髄液減少症との因果関係を認めない判決が圧倒的だったが、05年2月、福岡地裁行橋支部で因果関係を認める判決が出され、06年1月には鳥取地裁で因果関係を認める2例目の判決が出された。司法判断にも変化の兆しが見える。
 むち打ち症の原因としての脳脊髄液減少症とブラッドパッチ療法の有効性が医学界や国に認められれば、ブラッドパッチ療法の保険適用へとつながり、全国の患者に根本的な治療の道が開ける。加えて、自賠責保険労災保険における後遺障害認定基準の見直しにもつながり、被害者救済に弾みがつく。
 むち打ち症はこれだけ多くの患者がいながら、がんなどと比べ医療技術の進歩が遅れてきた。
 今後、脳脊髄液減少症の診断・治療ガイドラインの確立やブラッドパッチ療法が効かない場合の治療法の開発が急がれ、国を挙げての研究が求められる。


 『公明の取り組み』
 『治療法普及へ全力支援』


 公明党は患者救済に向け、いち早く行動を開始した。
 国政レベルでは、古屋範子衆院議員が04年3月、ブラッドパッチ療法の研究と保険適用を求める質問主意書を提出。同年12月には浜四津敏子代表代行らが、「脳脊髄液減少症患者支援の会」の代表とともに厚労省に西博義副大臣(当時、公明党)を訪ね、10万人を超える署名簿を添えて、治療法の確立やブラッドパッチ療法への保険適用などを要請した。
 今月13日には、井上義久政務調査会長が「鞭打ち症患者支援協会」から要請を受け、「党全体として取り組む体制をつくりたい」と表明した【写真】。
 また、公明党都道府県・政令市レベルでも患者団体と連携し、勉強会の開催や行政当局への働き掛けを活発に展開。地方議会から国への意見書提出を全面的に後押ししている。
 『早期の保険適用を期待/明舞中央病院脳神経外科部長/中川紀充氏』
 髄液漏れを主原因とする脳脊髄液減少症に対して、ブラッドパッチ療法は完全な治療法ではないが、現時点では有効な治療法と考えられている。
 治療施設における成績はほぼ同様の結果で、患者の約7割が改善傾向を示し、そのうちの約半分は顕著な改善が見られる。しかし、効果の出ない人や少数派であるが悪化する人もいる。
 残念なのは、脳脊髄液減少症の治療施設が少なく、患者の受け入れが限られている点だ。
 現在、積極的に治療に取り組んでいる医療機関は全国でも50カ所程度と思われる。
 そのため、患者が集中して予約から診察までに数カ月待ちという医療機関も珍しくない。
 脳脊髄液減少症の治療施設が増えていくためには、ブラッドパッチ療法の保険適用が必要だと思う。早期実現を期待したい。
 また、なぜ髄液が減少することによってさまざまな症状が出るのかといった病態の解明や、より精度の高い検査方法の開発が求められる。診断基準の確立に向け、さらなる積み重ねが必要だ。
 『公的相談窓口の設置を/「鞭打ち症患者支援協会」代表理事/中井宏氏』
 当協会は、脳脊髄液減少症をブラッドパッチ療法で改善できた患者20人が02年8月、患者救済を目的に、脳脊髄液減少症に対する理解と治療法を全国に広げることを目的に設立された。
 むち打ち症の主な原因である脳脊髄液減少症の患者は、全国で約30万人、さらに予備軍とも言うべき人は100万人に達するとの推計もある。
 脳脊髄液減少症はマスコミでも数多く取り上げられ、社会の認知が徐々にではあるが広がっている。それにより「周囲から仮病扱いされていたのが理解された」との喜びの声が寄せられるようになった。運動の一つの成果と言える。
 しかし、患者救済はこれからだ。国や関係機関は髄液漏れによってさまざまな症状が出ることを早く認め、救済の手を差し伸べてほしい。国が積極的に研究に取り組むことが不可欠だ。
 今も患者の悲痛な声が当会の相談窓口に連日、届けられている。全国の患者会は相談に疲れ、もはや一民間団体で患者を支えることは限界にきている。公的な相談窓口の開設を強く望みたい。
 脳脊髄液減少症 脳や脊髄の周囲を循環している脳脊髄液が、強い衝撃を受けることによって硬膜から漏れ出し、その結果、脳が沈み、頭痛や目まいなどの症状を引き起こす病気。そのほか、頭重感、腰痛、耳鳴り、視力低下、うつ、睡眠障害、思考力低下、倦怠感など、症状は多岐にわたる。起立すると症状が強くなり、横になると和らぐ特徴がある。
(公明新聞:2066年4月19日)

現在も、唯一有効な治療法であるブラッドバッチ療法は保健適用外となっています。原因不明の様々な症状に苦しみ、やっとの思いで原因が分かっても、高額な治療費が掛かってしまいます。
弥富市からもこの「脳脊髄液減少症」の認知と、一日も早い保険適用を実現させていきたいと思います。