説明責任を果たさぬまま

違法献金事件で問われる民主の自浄能力

小沢代表辞任


 「なぜ辞任されたのか、その理由がよく分からない」――11日の小沢一郎民主党代表の辞任表明について公明党北側一雄幹事長が述べたこの感想は、国民の思いそのものであろう。

 小沢代表の第1秘書が政治資金規正法違反で逮捕されてから70日、この間ずっと小沢代表の「政治とカネ」の問題は国民の関心事項だった。秘書の逮捕後に会見をしたが、多くの国民はそれで小沢代表が説明責任を果たしたとは考えていない。民主党内からでさえも説明責任を求める声が絶えなかったし、代表辞任を求める声さえ上がっていた。

 そうした中での辞任表明である。

 ところが小沢氏の話の要点は、「党内が乱れていたのでは、総選挙に勝てない」「自ら身を引くことで、団結を強め、挙党一致をより強固なものにしたいと判断した」ということに尽きる。

 党内が乱れた原因である自身の「政治とカネ」のことは一切論じず、総選挙に勝つことであらゆる問題が全てクリアされるかのような、一方的な思い込みに基づく内容と言われても仕方がないだろう。国民に対して真摯に語ろうという姿勢は全く見られなかった。

 野党第1党の党首の発言は、おのずと責任を伴う。

 議会制民主主義の母国・イギリスの場合、野党第1党の党首は総選挙の結果次第でいつでも組閣できる「影の内閣」の首相として、責任ある言動を求められる。「政権交代によって日本に議会制民主主義を定着させること」を自身の最終目標と標榜し、これまで繰り返し述べてきた小沢氏であるだけに、こうした政治リーダーとしての責任感が一層求められたはずだ。

 辞任表明で、「政権交代」という自身の信条をただ繰り返しただけでは、政治リーダーとしての責任を果たしているとは到底言えない。


金権体質に国民も批判


 小沢氏は、「なぜ、西松建設から過去十数年の長きにわたって総額約3億円もの巨額献金を受け取らなければならなかったのか」との、国民の疑問には何ら答えていない。

 「建設会社から長年、巨額の政治献金を受け取る行為は、古い自民党的な金権体質そのものだ」(読売新聞12日付「社説」)、「公共事業をめぐる政官業の癒着を厳しく指弾し、『国のかたち』を抜本的に変えると主張してきた民主党なのに、その基本姿勢と矛盾する」(朝日新聞12日付「社説」)と批判されていることに対し、小沢氏は正面から国民に説明する責任がある。厳しい世論の背景にあるのは、まさにこの点だからだ。

 辞任表明で「政治資金の問題についても一点のやましいことはない」と発言することで、すまされるような問題ではない。

 同時に、小沢氏のこうした発言を認めて代表続投を容認し、独自調査など自浄能力も示せなかった民主党執行部の責任も重大だ。

(公明新聞:5月13日)