ワクチン接種に公的助成を

医療機関への十分な財政支援が急務

新型インフルエンザ


 新型インフルエンザの感染が急速に拡大している。
 8月24〜30日の週には、学校などで発生した集団感染件数が1330件に上った。これは前週の約1・5倍、厚生労働省が報告を取り始めた7月下旬以降、5週連続の増加だ。
 また、8月23〜29日の1週間に、インフルエンザを原因とする休校や学年・学級閉鎖などの措置を取った小中高校、保育所、幼稚園は32都道府県278施設に急増。1週間前の8県77施設に比べ、3・6倍に増えた。
 9月1日から、全国の学校で2学期がスタートし、感染が爆発的に拡大していることが懸念される。厚労省が8月28日に発表した「流行シナリオ」では、9月下旬から10月に流行のピークを迎え、1日当たりの新規発症者数は約76万2000人、入院患者数は約4万6400人に達すると推計している。これは国民の発症率が20%のケースで、都市部などでは発症率が30%超える可能性も指摘している。
 既に、どこで誰が感染してもおかしくない状況であり、患者の急増に対応できる各地域ごとの医療提供体制の確立が急務だ。医師や看護師など人員の確保をはじめ、重症者の増加を想定したベッドや人工呼吸器などの医療機器の確保、休日・夜間の診療体制の整備、院内感染対策など、課題は山積している。
 しかし、各医療機関にとっては看護師1人を増やすだけでも容易なことではなく、国・地方自治体の医療機関に対する財政支援が不可欠だ。行政と医師会、医療機関など関係者の緊密な連携による迅速な体制整備を望みたい。
 公明党は8月24日、政府に対して、新型インフルエンザ対策の一層の強化を求める緊急の申し入れを行った。この中で医療機関に対する十分な財政支援を強く求めたところだ。申し入れでは、10月下旬にも出荷が始まるとされるワクチンの接種費用への公的助成も要望した。
 これに対して舛添要一厚労相は4日、接種費用に関して、低所得者を対象に無料化や一部負担軽減を行う方針を表明した。公的助成に踏み出した点は評価したい。
 ただ、日本小児科学会も「接種を受けられない小児が出ないよう費用を無料化すべきだ」と要請している。小児でなくとも、重症化の危険性が高い糖尿病やぜんそくなどの慢性疾患患者、妊婦、高齢者にとっても費用負担の問題は切実だ。
 収入によって、ワクチン接種の機会に格差が生じることがないよう、政府は公的助成による無料化や負担軽減の対象者の範囲を可能な限り拡大すべきだ。


皆で重症者を減らそう


 感染の拡大を抑え、流行のピークをなだらかにできれば、医療機関の“パンク状態”を防げるとともに、その分だけ重症者の発生を少なくできる。国民一人一人が自覚をもって、うがい・手洗い、マスク着用など「感染しない」「うつさない」地道な対策に努めたい。
(公明新聞:9月5日)