歳出の膨張に歯止めきかず

厳しい経済・財政状況踏まえた対応を

不安増す予算編成


 鳩山政権が誕生して2カ月。この間、日本経済に明るい展望は見いだせただろうか。


 経済は“生き物”といわれるだけに、先行きには敏感だ。そこで経済の先行指標の動きを見ると、日経平均株価衆院選前の1万円台を割り込み、最近は9000円台後半で推移。鉱工業生産指数(国内の製造業と鉱業の生産の動きを示す指標)や新規求人数も改善したとはいえ、水準は依然低い。


 こうした指標を見る限り、日本経済の先行き不安は、いまだ根強いのが現実の姿だ。


 内閣府が16日に発表した7―9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除いた実質で前期比1・2%増、年率換算で4.8%増と、2四半期連続のプラス成長となった。紛れもなく、前政権が講じた経済対策が実った結果だ。


 一方、菅・国家戦略担当相は記者会見で「デフレ(物価が持続的に下落する状態)的な状況に入りつつあり、雇用も予断を許さず、手放しで喜べない」と、先行きは楽観視できない現状を率直に認めた。


 確かに、デフレや雇用情勢は今の日本経済の“急所”であることは疑いない。ただ、これらの課題に処方箋を示すべき鳩山政権自体が不安要素となっているのも事実だ。このうち、特に懸念が強いのは「来年度予算の膨張化」だろう。


 来年度予算概算要求は、民主党マニフェストに盛り込んだ施策の実現に躍起になるあまり、過去最大の約95兆円にまで膨張。これに金額を明示しない「事項要求」を含めると、さらに数兆円程度膨らむという。


 景気低迷で来年度も大幅な税収増は期待できず、税収は30兆円台にとどまる見通し。それでも、政府は今年度補正予算の強引な執行停止で生んだ約2兆9000億円の大半を今年度第2次補正予算の財源に充てる上、来年度の新規国債発行額は44兆円以下に抑えるという。


財源不足は明らか


 政府は概算要求の圧縮に向け、「事業仕分け」で政治主導のパフォーマンスに血眼だが、目標の3兆円削減を達成したとしても「財源不足は明らか」(18日付 日経)。子ども手当や高速道路料金の無料化など「これらの目玉政策の実施に執着するのなら、予算規模を適正な水準に抑えるのは不可能」(17日付 読売)に近い。


 そもそも、鳩山政権は財政健全化への道筋がまったく描けていないのだ。主要国で最も厳しいわが国の財政事情を無視し、マニフェスト実現に走ったところで、その先にあるのは経済の混乱でしかない。


 仮に、財源確保のために赤字国債が大量増発となれば、国債価格は急落し、長期金利が高騰、住宅ローンや企業融資などに悪影響が生じ、景気の失速は免れない。国の利払い費も増え、財政健全化は一段と遠のく。


 鳩山政権は、経済・財政状況を十分に踏まえた上で、予算編成に臨むよう心掛けるべきだ。
(公明新聞:11月20日)