安易な結論は国益損なう

民主党マニフェストの財源確保狙う

事業仕分け


  来年度の概算要求の“無駄”を洗い出すとのふれこみで、政府の行政刷新会議が実施している「事業仕分け」は17日、前半の作業を終えた。


  当初、与党の社民党国民新党の国会議員への呼び掛けはなく、民主党主導の「事業仕分け」の色彩が濃厚だ。来年の参院選をにらんで、子ども手当(来年度は半額実施で2・7兆円必要)など民主党マニフェストの財源確保も、作業の目的であろう。目標の捻出額3兆円以上のうち、3分の1程度の見通しがついたと言われるが、その判定は疑問だらけだ。


  これまで450億円以上を投入してきた「次世代スーパーコンピューター」への補助金は、「世界一でなくていい」として、事実上の凍結。研究者団体が「国益を大きく損なうもので、不適切」などの緊急声明を出すなど、波紋を広げている。宇宙航空研究開発機構JAXA)の中型ロケットGX計画も中止と判断された。


  また、「抜本見直し」とされた「地方交付税」は地方自治の根幹にかかわり、「見直し」と判定された「思いやり予算」は、良好な日米関係を支えている。行政刷新会議が独自に判断を下せる性質なのか疑問だ。民主党にとっては“無駄”でも国の将来にとって重要なものは数多い。国益を損なうような判断を重ねていては政府への不信感は高まるばかりだ。


  そもそも、220件、447事業を対象に、1件当たり1時間の公開協議で存廃を判定するやり方自体が異常である。「見直し」との判定が下った医療機関に支払われる診療報酬は、中央社会保険医療協議会中医協厚生労働相の諮問機関)で専門家が週に2回以上審議している。それを無視して、乱暴な結論を出したことに、関係者から批判が上がっている。


財務省の視点を反映


  短時間で次々と結論が下されたが、行政刷新会議の事務局が、歳出削減をめざす仕分け対象事業の問題点や担当省庁の主張への反論まで示したマニュアルを作成していたことが明らかになった。仕分け人の主張には財務省の視点が色濃く反映されており、「民主党財務省の共同作業」になっている。


  今回の「事業仕分け」の正当性に疑問の声も上がっている。行政刷新会議閣議決定によって設けられ、法令に基づき設置されたものではない。このため、法律上の位置付けが当初から不明確である。公明党草川昭三参院議員は、質問主意書で、「事業仕分け人には中立公正が求められる」と指摘し、その選定基準や、仕分け対象と利害関係がある者が仕分け人になっているケースがないかどうか、政府に回答を求めている。


  議論を重ね改善策を探っていくのではなく、国民に“見せる”ために行われた「事業仕分け」は、パフォーマンス優先の民主党らしい演出である。重要な事業が後退することがないよう、注視していきたい。
(公明新聞:11月21日)