うつ治療に“希望の光”

本9月定例会の一般質問で弥富市における「うつ病対策」について、どういう認識をして、道対応していくのかを伺った。市側の回答では、現在の市内の有病者数は特定できていない。対応としては本人とその家族はもちろんの事、地域や職場などでも気づいてあげる事が大切だとし、広報を通じ所定の相談所の紹介や、医療施設の紹介を行っている。先日、報道によると自殺やうつ病による経済的損失は2009年度で2,7兆円に上るとあった。なにより、心身健康であれば、その人の能力や可能性は実際はかりしれない。近年の精神的疾患は、人間関係の希薄化や、不況による減収や離職のストレスも原因の一つにあげられるだろう。社会のあり方に問題がある以上、行政側は真摯に受け止め、改善に向けあらゆる手を打つ責任がある。大切な大切な人材なのだから。


認知行動療法」の現場から
公明推進で保険適用 対策さらに

「ようやく前に進める」
6カ月で薬が半減否定的な思考を修正

うつ病の治療に有効な認知行動療法公明党の推進で今年4月から保険適用となり、関心が高まっている。認知行動療法とはどのようなものか。実際に治療を受けた患者の体験を取材した。

「これなら良くなれる。これで、ようやく前に進める」――。

今年3月。清美さん(35)=仮名=は、認知行動療法に出合い、前途に希望の光が差し込んだ気がした。

清美さんは神奈川県在住。かつては音楽教室で講師を務め、40人を超える生徒が在籍、評判も上々だった。

性格は明るく、しっかり者。仕事に、友人との交流にと打ち込む中、気が付けば3年近く、睡眠時間が1日4時間に満たない生活を続けていた。

病気の前兆が出始めたのは2005年初めごろ。突然、めまいや不安感に襲われることが増え、1週間で体重が6キロも減少。人と話すことが怖くなり、人込みを避けるようになっていく。

診断結果は、うつ病。薬物治療を開始したが、ひどいときにはリストカットや2、3週間の絶食を繰り返す。

「治る病気だと言われてはきたが、いつ治るのか」。漠然とした不安が常につきまとい続けた。

うつ病を患って6年目の今年。認知行動療法の新聞記事に目が止まった。意を決して受診。初診の際、担当医師は、「パニック障害強迫性障害です。認知行動療法を具体的にやっていくことで症状は良くなっていきますよ」「復職は暮れぐらいをめざしましょう」と語ってくれた。

強迫性障害の行動療法では、自身の思考記録を書きとどめていく。「音楽教室の生徒に迷惑をかけないよう絶対に風邪はひけない」。過度の心配をしてしまう自分を客観的に見つめ、「事実」「心配内容」「他の考え方」「気分の変化」を書き出した。「すぐに風邪と思い込み、予防的に薬を飲む」「生身の人間だから風邪をひく」「ひいたら、その時治せばいい」……。今でも何か不安がある時は、思考記録を付けて、自分で自分をなだめている。

パニック障害の療法では、母親と一緒に電車に乗ったり、スーパーに行く練習を繰り返した。気が動転しても15分ぐらいで落ち着くことを実感。「慌てなければ大丈夫」。自然と自信が身に付いた。

「治療開始から、半年はあっという間でした。気付いたら薬の種類も半分以下に減り、電車の人込みにも耐えられるようになりました」。清美さんは、元気な笑顔で振り返った。

15日に都議会公明党が視察した都立中部総合精神保健福祉センターでも、うつ病により失職・休業中の患者の復職をめざす取り組みに認知行動療法を活用、この5年間で利用終了者の約9割が復職(転職含む)を果たしている。

ただ、普及には課題も多い。同センターの菅原誠生活訓練科長は、保険が適用されるのが1回30分の治療を医師が行う場合に限られており、臨床心理士が行う場合は保険適用外となることや、医師、心理士とも人手が圧倒的に不足している点を指摘する。

「今までの対策では不十分。社会全体で総合的な対策に取り組む必要がある」と、浜田昌良党うつ対策ワーキングチーム事務局長(参院議員)。「新しい福祉」の推進へ、公明党の挑戦は続く。

認知行動療法

人間の気分や行動が、ものの見方や現実の受け止め方(認知)と密接に関係していることから、患者の否定的な思考(認知の歪み)に対し、治療者の手助けによって認知の歪みに気付かせ、心のストレスを軽くする治療法。
(公明新聞:9月18日)