定額給付金 ここが聞きたい

山口政調会長にインタビュー
「生活、景気に対応」で一貫
“丸投げ”批判は当たらず
地方の声聞き国が指針

政府・与党の新たな経済対策の目玉である定額給付金について、さまざまな質問が寄せられています。政府・与党の交渉に当たった公明党山口那津男政務調査会長にポイントを聞きました。

 ――所得制限をどうするかが論議となった理由は。

 山口政調会長 定額給付金は当初、物価高で所得が伸びない局面に対応する意味で、生活支援、社会政策的な意味合いが強くありました。しかし、米国発の金融危機が日本の実体経済に悪影響を及ぼしつつある中で、消費を刺激して景気を下支えする経済政策としての意味合いが強くなってきています。現時点では、その両方の政策的意味があります。

 生活支援を強調すると、その必要がない人には「所得制限すべき」となる。一方、経済政策を強調すると、「一括してスピーディーに交付した方がいい」となるので、所得制限を設けない方がいいことになります。

 いずれの意見も、どの政策目標を強調するかの筋論を主張したもので、(政府・与党の方針が)二転三転したかのような指摘がありますが、そのようなことは一切ありません。

 ――所得制限の判断や具体的な実施方法を市区町村に“丸投げ”しているとの批判があるが。

 山口 “丸投げ”批判は全くの筋違いです。例えば、所得制限を設けなくてもよいとすることで、地方自治体が実情に応じてやりやすいようにする選択肢をつくりました。

 しかも、これから現場の意見を十分に聞き、尊重しながら国がガイドライン(指針)を決めていきます。11日付で総務省定額給付金実施本部をつくり、その下に対策室を設けました。これには総務省のほか、財務省金融庁法務省警察庁も入っています。法務省は、外国人も対象とするからで、警察庁振り込め詐欺などの犯罪を防ぐためです。

 このチームで、これから実施の在り方を詳細に検討します。実施のガイドラインを国で決めて、その上で、それぞれの自治体が交付要綱をつくることになります。“丸投げ”との批判は当たりません。

 ――貯蓄に回り消費に与える効果が低いとの声も出ている。

 山口 内閣府がGDP(国内総生産)を0.1%押し上げる効果があると発表しました。これは比較的、物価も所得も低めで安定しているときのデータを基につくった古いモデルに、単に数字を当てはめて出した試算です。

 今は急激に生活必需品の物価が上がり、所得は下がり気味です。こうした経済状況に内閣府のモデルは妥当しないのではないでしょうか。もっと高い押し上げ効果があると考えています。

 しかも、高齢化に伴い貯蓄する割合はどんどん下がっています。その一方で、家計調査のデータを見ても、物価高で貯蓄より消費に回す割合が増えています。こうした角度から見れば、定額給付金が消費に回る確率は高く、その場で使うか、一時貯金しても1年以内には使ってしまうというのが、われわれの現場的な実感です。消費を押し上げる効果は間違いなくあると思います。

(公明新聞:11月14日)


定額給付金 ほぼ全額消費に回る」日本総研 藤井英彦調査部長

12日に与党が決定した総額2兆円規模の定額給付金の効果について、日本総合研究所の藤井英彦調査部長が本紙の取材に対し、以下のコメントを寄せた。

 定額給付金が景気を押し上げるきっかけになるかというと2兆円規模では足りないが、低中所得者の所得や雇用環境が悪化していることから、給付金はほぼ全額が消費に回り、GDP(国内総生産)を0.4%程度押し上げる効果はあるだろう。景気がより悪化する流れを、よりマイルドにする効果はあるのではないか。
(公明新聞:11月14日)