検証・民主党「子ども手当」

対象児童いない世帯は大増税


民主党は子ども1人当たり月額2万6000円の「子ども手当」を中学校卒業まで支給すると訴えている。しかし、他の政策と同様に財源はあいまいそのもの。民主党子ども手当を検証する。


扶養控除廃止というが
必要財源(5.6兆円)の1/3にも満たず

 
子ども1人当たり月額2万6000円を中学卒業まで支給する民主党子ども手当の費用は、同党が今年(2008年)4月、国会に提出した「子ども手当法案」によれば、全額国庫負担で年間「約5.6兆円の見込み」だ。

 しかし、財源は全く明らかでなく、昨年(2007年)末に民主党がまとめた税制改革大綱の中の「2008年度税制改正への対応」に、わずか「所得税の『配偶者控除配偶者特別控除の残存部分を含む)』『扶養控除(一般)』から『子ども手当』へ転換」とあるだけだ。

 捻出できる財源は、配偶者控除の廃止で0.7兆円程度、配偶者特別控除の廃止で200億円程度、扶養控除(一般)の廃止で0.9兆円程度(2008年度予算ベース)で、合計しても1.62兆円程度にすぎない。


 残る4兆円程度の財源は何の説明もない。


 財源不足は民主党が主張するように、一般・特別会計の年間純支出212兆円を組み替えて捻出する20.5兆円の中から充当するつもりかもしれないが、その主張自体に現実性がない。年間純支出の「8割以上は国債償還、社会保障給付などで、削減は困難だ」(読売「社説」 2008年10月2日付)などと、マスコミ各紙が20.5兆円捻出の可能性に疑問を投げ掛けている。

 どう予算を組み替えるのか。つまり、どの予算を削り、何を増税するのか。すべて国民生活に直結する話だ。その明細が示されない限り、民主党子ども手当はまさに“絵に描いたもち”にすぎない。 

 さて、実際に民主党子ども手当が実施されるとどうなるか。中学生までの対象児童のいない世帯は大増税。「控除の廃止で、子どものいない世帯の多くは増税になってしまう」(読売「社説」 2007年12月27日付)、「手当の財源には配偶者控除や扶養控除の廃止分を充てるため、子どものいない家庭は大幅増税になる可能性もある」(週刊朝日 2008年10月24日号)などと指摘されている通りだ。

 ましてや、仮に、財源に特定扶養控除(16歳以上23歳未満が対象)や老人扶養控除(70歳以上が対象)の廃止が充てられれば、教育費に苦しむ高校生、大学生などがいる家庭や高齢者世帯の生活には大きな打撃となる。


児童手当拡充に反対続けた民主
子ども手当」語る資格なし



 そもそも民主党に、子ども手当の創設を語る資格などない。なぜなら<右表>の通り、2000年6月から4回にわたる児童手当の拡充に「バラマキ」などとの批判を浴びせ、反対し続けた唯一の政党だからだ。例えば、2004年6月の参院本会議では、支給対象を小学校3年生までに引き上げる児童手当法一部改正案に対し、「単なるバラマキにすぎません」と反対している。

 これに対して公明党は、児童手当を子育て支援の柱の一つに位置付け、一貫して充実に取り組んできた。

 神奈川県立保健福祉大学の山崎泰彦教授が、「児童手当が近年、着実に改善されてきた。対象年齢が就学前まで(2000年)、小学校3年修了まで(2004年)、小学校修了まで(2006年)、そして今年(2008年)は3歳未満の支給額が一律に1万円に増額された。児童手当の創設から近年の改善を終始リードしてきたのは公明党だ」(本紙2007月3月29日付)と語っている通りだ。

 2008年度の児童手当の給付総額は1兆284億円(予算ベース)と、初めて1兆円の大台に乗せた。公明党が連立政権に参加する前の1998年度の給付総額1484億円に比べて約7倍、金額にして8800億円が子育て家庭への経済支援として上積みされた。事実の上で子育て家庭を応援しているのは公明党なのだ。


お粗末な民主党の政策

 
民主党は2003年衆院選時のマニフェストでは、児童手当に関する記述がなく、政策として重視していなかったことが分かる。子ども手当の記述は2004年参院選時のマニフェストから。「配偶者控除配偶者特別控除を廃止し、税の増収分で子ども手当(児童手当)を充実します」と記した。

 マニフェストに支給月額が明示されたのは、2005年衆院選時。中学卒業まで、1人当たり月額1万6000円の子ども手当を支給し、その財源として、配偶者控除配偶者特別控除・扶養控除(老親控除以外)の廃止を挙げた。

 しかし、お粗末なのは、これを実行すると、子育て家庭は家計がより苦しくなるということ。妻が配偶者控除の対象者で、子どもが小学1年生1人の3人家庭をモデルに試算すると、子ども手当の年額が19万2000円。各種控除の廃止による増税が年額14万2000円で、差し引き5万円。一方、当時から児童手当制度は、第1子は月額5000円で年額6万円。つまり、民主党案だと1万円も損をすることが明らかだった。

 そのためか、2007年参院選時のマニフェストから急に、支給月額を2万6000円へとハネ上げた。しかし、財源が遠く及ばず、所詮、“空手形”にすぎないのである。
(公明新聞:11月20日)