140万人の雇用下支え

3年間で総額2兆円投入、政府

政府は9日、与党プロジェクトチームが取りまとめた「新たな雇用対策」の提言を踏まえ、2008年度第2次補正予算や来年度予算の中で取り組む方針を決定した。新雇用対策は、(1)雇用維持(2)再就職支援(3)内定取り消し――への三つの対策が柱。今後3年間で総額2兆円程度の予算を投入し、140万人の雇用を下支えする。


雇用維持対策

正社員採用の企業に助成金
雇い止めルールの指導徹底

 
派遣労働者などの雇い止めや解雇、採用内定取り消しの問題が深刻化していることから、新雇用対策では非正規労働者の雇用維持や派遣労働者の直接雇用を強力に推進する。

 具体的には、契約満了前の派遣労働者を正社員として直接雇用した企業に対し、労働者1人当たり最大100万円(大企業は半額)の助成金を支給する。さらに、事業縮小を余儀なくされた企業での失業を防止する雇用調整助成金(政府の「生活対策」により賃金、休業手当の3分の2を支給)や、中小企業緊急雇用安定助成金(第1次補正予算により賃金、休業手当の5分の4を支給)の対象者を拡大。派遣労働者期間工などの、継続雇用期間が6カ月未満の雇用保険の被保険者(新規学卒者を含む)も対象とし、非正規労働者の雇用維持に努める企業を支援する。

 また、悪質な“派遣、非正規切り”を防止するため、労働者派遣契約の解除をはじめ、雇用契約を更新しない「雇い止め」などのルールを守るよう企業に指導徹底していく。さらに、賃金不払いなどの問題に関する相談体制も強化し、迅速に対応する。

 一方、経営難に陥った企業を支援する中小企業再生支援協議会の弁護士など再生専門家を増強し、サポート態勢を強化。中小・小規模企業の事業継続や再生を通じて雇用を維持させる。


再就職支援対策

4000億円基金で雇用創出
雇用保険制度の機能を強化

 雇用保険セーフティーネット(安全網)や再就職支援の機能を強化するため、過去最大となる4000億円の基金を設立。その内訳として、地域ブランドの商品開発など地域で雇用機会を創出する「ふるさと雇用再生特別交付金(2500億円)」(仮称)を拡充するほか、失業した非正規労働者や中高年齢者を対象に一時的な雇用機会を創出する「緊急雇用創出事業(1500億円)」(仮称)を新たに実施する。

 また、雇用保険制度を見直し、非正規労働者の適用基準である「1年以上の雇用見込み」を「6カ月以上」に緩和。さらに契約更新されなかった有期契約労働者の受給資格要件(1年)を6カ月とし、6カ月以上1年未満で雇い止めされた労働者も給付の対象にする。

 一方、厚生労働省の緊急雇用対策本部(本部長=渡辺孝男副大臣公明党)は、失業した派遣労働者期間従業員らへの支援策を公表。失業で住居も失った労働者に対し、特定の金融機関が住宅費や生活費などを低利融資する仕組みをつくり、国が事実上の債務保証を行う。また、離職後も寮などから退去させず、無償で住居を提供した事業主には、地域に応じて労働者1人当たり月額4万―6万円を最長6カ月助成する。財源を今年度の2次補正予算案に盛り込む。


内定取り消し対策

悪質な取消しは企業名を公表
採用企業に特別奨励金支給

 採用内定取り消し対策では、企業への指導を徹底し、悪質な企業名を公表する。さらに、内定を取り消された学生を年長フリーター向けの特別奨励金の対象に追加。雇用した企業に対し、1人当たり100万円(大企業は50万円)を支給する。

 一方、ハローワークに特別相談窓口を設置し、学生に対するきめ細かな就職支援を実施。さらに、内定を取り消された学生などについて、早期に就職先が決まるよう、採用を希望する企業の情報をネット上で提供する。

 また、10年3月に卒業予定の学生に対する就職支援も強化。ものづくり企業や中小企業、介護分野など、学生の職業意欲を喚起しつつ、地域の企業との就職面接会などを実施する。さらに、早期採用選考活動(青田買い)の抑制や新規学卒者の採用枠の拡大について、事業主・団体に要請する。


新雇用対策のポイント

◆3年間で2兆円規模の予算を確保

◆雇用創出のため、過去最大4000億円規模の基金創設

◆140万人の雇用を下支え

【雇用維持対策】

 (1)雇用調整助成金の特例措置

 (2)派遣先による派遣労働者の雇い入れへの助成措置の創設

【再就職支援】

 (1)雇用保険制度の見直し

 ・非正規労働者に対する適用範囲拡大

 ・受給資格要件を緩和

 ・再就職が困難な場合、給付日数を延長

 (2)「ふるさと雇用再生特別交付金」(仮称)の速やかな実施、拡充

 (3)「緊急雇用創出事業」(仮称)の創設

 (4)派遣労働者に対する総合的な支援

 (5)住宅支援対策の全国実施(住宅入居費用の貸与など)

【内定取り消し対策】

 (1)相談体制の整備、企業指導の強化

 (2)内定を取り消された就職未決定者の雇い入れに関する特別奨励金

 (3)2010年3月卒業予定の学生に対する就職支援の強化

(公明新聞:12月14日)