総合的な支援策の確立急げ

「労働難民」の放置は将来に禍根

外国人就労問題


 雇用状況が悪化する中、日本で暮らす外国人労働者の解雇が相次いでいる。

 もともと言葉の壁や生活習慣の違いを抱え、医療保険など社会のセーフティーネット(安全網)から漏れていることも少なくない外国人労働者にとって、「失職」の二字は日本人失業者以上に深刻な意味を持つ。

 実際、突然の解雇で日々の暮らしが立ち行かなくなり、家族は病院に行けず、子どもは外国人学校に通えなくなったといった深刻な事例が全国で発生している。例えば、岐阜県では1月末までに県内在住の外国人労働者の約4割、3000人以上が失業し、県内にある七つのブラジル人学校の児童生徒数も、この数カ月間で400人以上が退学している。

 もはや事態は単なる雇用問題の域を超え、人権や教育、医療にまでかかわる政治・社会問題に化していると言わざるを得ない。生活・就労支援から医療・教育支援まで、総合的な外国人労働者支援策を早急に打ち立てる必要がある。

 周知の通り、日本で外国人労働者が急増し始めたのは1990年以降のことだ。入管法の改正で日系人の就労が自由化され、南米などから日系人2世、3世が「合法労働者」として単純労働の現場で働くようになった。「ニューカマー」と呼ばれるこれら新来の外国人は、家族と共に来日し、「永住者」や「定住者」の資格を取得する一方、自動車など製造業の下請け工場で勤勉に働き、不足する国内の労働力を補ってきた。この20年間の日本経済の歩みは、彼ら外国人労働者を抜きに語れない。

 まして日本の将来を思う時、外国人労働者の存在の重みは一層増すことがあっても、減じることはないはずだ。少子高齢化の進行に伴う絶対的な労働力不足を補充する手だては、高齢者と女性と、そして外国人に目を向ける以外にないからである。

 となれば、雇用状況が悪化している今こそ、長期的視点から外国人労働者支援策を確立することが重要だ。「労働難民」の放置は、将来に大きな禍根を残すことを指摘しておきたい。


多民族共生社会へ


 こうした視点に立って、公明党は年頭から外国人労働者の雇用状況や外国人学校の実態などを全国で調査してきた。今月10日には、党労働政策委員会(福島豊委員長=衆院議員)が総合的な定住外国人労働者支援策を提言したところでもある。

 日本語研修や職業訓練の実施、医療や教育など解雇に伴って派生する諸問題への対応などを盛り込んだ公明党独自のこの支援策は、与党プロジェクトチームが近くまとめる追加の緊急雇用対策にも反映される見通しだ。同じく公明党の推進で、政府が内閣府定住外国人施策推進室を設けたことも歓迎したい。

 「多民族多文化共生社会」という理想の国家像を思い描きながら、公明党は引き続き、定住外国人の雇用問題に全力で取り組んでいく覚悟である。
(公明新聞:3月24日)