期待高まる大きな波及効果

5年延長、過去最大規模で実施

住宅ローン減税


 昨秋以降、米国発の金融不安が世界に広がり、日本経済も急速な悪化を続けているが、個別の家計や企業では、半年の間に衝撃を受け止め、新たな歩みを始めた人たちも数多く見受けられる。不況の波に直面する人たちへのセーフティーネット(安全網)の充実は当然として、一方で、経済全体の不必要な落ち込みを防ぐ消費喚起策は、しっかりと進めていく必要がある。

 定額給付金による消費を見込んだ商戦は多くの業界で活発化しており、高速道路料金引き下げに必要な自動料金収受システム(ETC)車載器は、各地で売り切れが続出している。

 こうした中で、消費喚起へ大きな期待を集めているのが減税額を過去最高水準に引き上げ、実施期限が延長される住宅ローン減税だ。住宅産業はすそ野が広く、減税の波及効果が大きい。国土交通省の試算によれば、住宅ローン減税の経済波及効果は年約4兆円に上るとされる。

 住宅ローン減税は、ローンを組んで戸建て住宅やマンションを購入した人に対し、年末のローン残高の一定割合を、原則として所得税から差し引く制度。昨年末で終了する予定だったが、期限は5年間の延長となる。

 減税の対象となるローン残高の上限は2008年の2000万円から5000万円へと引き上げられ、減税額は同じく08年の最高160万円から大きく拡充される。耐久性などに優れた200年住宅の場合、10年間にわたって毎年、年末のローン残高の1・2%(一般住宅は1%)の減税が可能になることから、その減税可能額は最高で総額600万円(一般住宅は500万円)となる。

 減税規模の拡大に加え、所得税から差し引けない減税分が住民税から差し引かれることも見逃せない。減税可能額がいくら大きくても、所得税額が低ければ実際の減税額は低くなる。このため、住民税からも差し引くことで、所得税額が減税額に満たない人たちへの恩恵が手厚くなる。

 住民税からの減税額は、収入から社会保険料基礎控除などを差し引いた「所得税の課税総所得金額等」の5%で、最高9万7500円。

 なお、減税の対象となるローン残高の上限は一般住宅の場合は11年以降、長期優良住宅の場合は12年以降、段階的に引き下げられる。

 省エネ改修やバリアフリー改修をした際も、200万円(太陽光発電装置の設置は300万円)を上限に工事費用の10%が所得税額から差し引かれる。


着実に経済下支え


 景気が落ち込む局面では、一層の経済環境悪化を見越して消費が先送りされ、さらに経済が落ち込む悪循環が懸念される。

 しかし、消費の先送りはいつまでも続くわけではない。消費者心理が落ち着き、先送りされた需要が表に出てくれば、経済の血流は流れ始める。

 今こそ、経済下支えの一手を、着実に進めていきたい。
(公明新聞:3月27日)