環境、成長重視で反転めざす

IMF要請のGDP比2% 実現へ

財政出動


 政府・与党が10日決定した過去最大規模の経済危機対策(総事業費56兆8000億円、財政支出15兆4000億円)に期待が広がっている。

 赤字国債の発行を批判する向きもあるが、国際通貨基金IMF)は2009年―10年にそれぞれ、国内総生産(GDP)比で2%の財政出動を求めている。金融危機と同時不況の荒波の中で、経済の底割れを防ぎ浮上を図るには財政支出の拡大は必要である。当面、財政規律よりも需要拡大を優先し、財政支出でグローバルな危機を乗り切ることは、新興国を含めた20カ国・地域(G20)の共通認識になっている。

 米国や中国は大規模な経済刺激策を発表、新たな追加刺激策には消極的な欧州連合(EU)も2年間で域内GDPの3・3%に当たる4000億ユーロ(約52兆円)規模の財政出動を決めており、わが国も、今回の対策が実施されれば、これまでの経済対策と合わせて「結果として2%を超える」(与謝野財務相)ことは間違いない。

 もちろん、景気刺激が急務だとしても理念や整合性の無いバラマキであってはならない。今回の経済危機対策は経済底割れを回避するため「雇用」や「資金繰り」の強化とともに、「成長」を志向。経済成長につながる戦略的な投資として挙げられた「低炭素革命」「健康長寿・子育て」「21世紀型インフラ整備」は日本の未来を見据えたものだ。

 すでにドイツで実施されている、いわゆるエコカーへの買い替え支援は、雇用(関連産業を含めると全就業人口の7・9%に当たる501万人)への波及効果が大きい自動車の需要掘り起こしと、環境・エネルギー対策を同時に進める試みとして注目されている。

 地域医療の再生、女性特有のがん対策の強化、介護職員の処遇改善、子育て世代への支援などは、いずれも、生活の安定や安心をもたらすために重要である。

 21世紀型インフラ整備は旧来型の公共事業や農業対策ではない。農地の集積化や戦略作物の生産強化など、強い日本農業の実現につなげていきたい。また、韓国、中国、シンガポールがアジアの空の拠点をめざす中、羽田空港の機能強化(成田空港との一体的運用)は不可欠である。

 また、「安心と活力」の実現に向けて自治体への配慮が重視されている。国が公共事業の地方負担分の軽減や臨時交付金などは地域経済の活性化や雇用拡大に役立つはずだ。


補正予算案提出へ


 仕事や収入など国民の安心が確保されてはじめて、消費も増え、雇用も拡大する。株価の下落トレンドはようやく終息の気配を見せており、経済危機対策の円滑な実施が期待されている。

 政府はこの対策を補正予算案としてまとめ、今月末にも国会に提出する。早期成立が期待されている。

(公明新聞:4月17日)