行政を生活者本位に大転換

与野党が修正合意し衆院を通過

消費者庁」実現へ


 国の行政を「産業振興中心」から「生活者本位」に大きく転換させるための「消費者庁および消費者委員会設置法案」を柱とする消費者庁関連3法案が、与野党の全会一致で衆院を通過したことで、今国会での成立が確実になった。

 2001年の中央省庁再編は行政の効率化がテーマであった。今回の消費者庁の創設は、行政の質の転換が問われる。国民の期待も大きい。

 近年、相次いだ欠陥商品による事故や食品の産地偽装などに対し、十分な対処ができなかった消費者行政が、国民の信頼感を喪失したことは非常に残念であった。

 こうした深刻な事態に対し政府・与党は、それぞれの事故に責任を負うべき官庁の監督権限を強化するという“対症療法”だけに終わらせることなく、消費者行政の司令塔として消費者庁を創設し、行政のあり方自体の大転換を迫る“体質改善”のための施策として消費者庁関連3法案を国会に提出し、成立をめざしてきた。

 これまで、医薬品関係は厚労省、食料品関係は農水省金融商品関係は金融庁、家電製品関係は経産省というように、消費者行政は各省庁がその所管法令の範囲内で個々別々に多元的に進められてきた。こうした現状に対し政府案は、消費者行政を消費者庁に一元化することによって、行政全体として消費者問題に取り組む体制をつくる法案をまとめた。

 一方、民主党は、各省庁がそれぞれに消費者行政を担当する仕組みは維持し、内閣の外に、高い独立性と強い権限をもった消費者権利院を創設し、そのトップに民間人を充てることによって消費者行政を厳しく監視する案をまとめた。

 首相の下で行政自体を生活者本位に転換させる政府案と、内閣の外から消費者行政を監視する民主案は、これまでの国会審議の中で対立してきた。しかし今回、与野党の修正協議が実り、消費者行政の一元化をめざす政府案を中心とした共同修正案がまとまったことは、新しい消費者行政にとって理想的な門出となった。


三者機関を強化


 共同修正によって、政府案の中にあった第三者の目で消費者庁を評価・監視するための消費者政策委員会(有識者で構成)は、内閣府の外局である消費者庁と同格の機関とするため、消費者庁の中ではなく、内閣府の中に置かれることになり、名称も消費者委員会となった。

 また、地方の消費者行政を拡充するため、消費生活センターの相談員の社会保険加入を進めるなどの待遇改善に関し、国が地方交付税措置を活用しながらさらに支援することになったほか、法施行後3年以内に検討する事項も多く盛り込まれた。

 消費者庁は、公務員の増員に頼らず、各省庁の消費者行政担当部門からの人事異動によって200人規模の役所としてスタートする。少数精鋭の人材に期待がかかる。

(公明新聞:4月20日)

どれだけ産業が復興し、経済が好転しても、それが消費者の不幸の上に成り立ったものではいけないということだ。多額の納税をする事業者は、行政としてはありがたい存在だが、「儲け主義」「拝金主義」の愚行を繰り返してはならないという決意の表れだと考える。