太田代表の衆院代表質問(要旨)

28日の衆院本会議から

公明党太田昭宏代表が28日の衆院本会議で、政府の財政演説に対して行った代表質問と政府答弁(いずれも要旨)は次の通り。

 私は公明党を代表し、ただいま議題となりました財政演説、平成21年度補正予算案に関連し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 総理、われわれ政党・政治家は今、何をなすべきか。その焦点とすべきはただ一点、未曾有の経済危機の突破へ向けた果敢なる行動、挑戦であると思います。景気・経済対策は、「トゥー・リトル、トゥー・レイト」であってはならない。それは大手金融機関の破綻が相次いだ10年前の日本の教訓であり、景気対策は大胆に、そしてスピード感をもって行われなければなりません。

 昨年来の経済危機に際し、わが党は危機打開のエンジン役になるとの決意で取り組んでまいりました。いたずらに横道にそれた議論をしている時ではない。政治家は経済危機を乗り越えるため、身体をはって「仕事をする」ということに全力を挙げねばなりません。

 これまで政府・与党が一体となって、世界の経済危機打開に向けて国際協調の推進役になるとともに、平成20年度の第1次補正予算、第2次補正予算、そして平成21年度本予算を「3段ロケット」として、いまだかつてない75兆円規模の景気対策を行ってまいりました。冬は必ず春となる、春を呼び寄せる戦いであります。

 消費喚起への基礎をなす生活者支援では、2兆円の定額給付金をはじめとして、子育て応援特別手当で650億円、保育等の充実整備のための「安心こども基金」で1000億円。その他、高齢者の医療費負担軽減や介護報酬の3%アップ、妊婦健診14回分の助成や出産育児一時金の増額、また住宅減税などを実施。

 雇用対策では、雇用維持に大きな効果を発揮している「雇用調整助成金」の拡充をはじめ、雇用創出のための4000億円の基金の創設や正規雇用促進のための助成金非正規労働者雇用保険適用の拡大など、3年間で総額3兆円の対策を行っています。

 また、中小企業支援では、緊急保証・貸付枠を30兆円に拡大、省エネ設備等の投資促進税制や中小企業減税の拡充。

 地域活性化では、学校耐震化等の促進に約2700億円、高速道路料金の大幅引き下げに5000億円、地域活性化交付金に6000億円、地域活力基盤創造交付金で9400億円の対策など、矢継ぎ早に手を打ってまいりました。

 私はまず政府に、これら施策が速やかに現場で実施されるよう、その前倒し執行に全力を挙げることを強く求めます。


不況脱出に“次への一手”を
経済の現状認識
 


現在の経済状況はいかなる地点にあるのか。昨年来の輸出の急減、生産の大幅減は在庫調整を一気に加速させ、まさに「つるべ落とし」のように景気は低下を続けています。しかし他方で、経済危機打開に向けた世界を挙げての取り組みと、わが国における75兆円に及ぶ切れ目のない経済対策とが相まって、ようやく経済の基調に若干の変化の兆しも見えてきました。

 具体的には、輸出や生産は依然厳しい水準にあるものの、輸出はアジア、とりわけ中国向けに回復し始めました。景気ウオッチャー調査、街角景気は現状判断DI、先行き判断DIともに、本年1月から3カ月連続して上向いています。原油価格の大幅低下は日本の交易条件を大きく改善しています。資本「流出」は「流入」へと転換し、国内の金融環境にも良い影響を与えていくに違いありません。

 総理、ここが正念場です。今が危機打開への分水嶺であります。日本経済に「日はまた昇る」かどうか。否、日本が世界に先駆けて不況脱出を図るとの強い意志と、“次への一手”断固たる対策が求められています。総理並びに財務大臣の経済認識とご決意を伺います。


21年度補正予算の早期成立


 その断固たる対策が真水15・4兆円、事業規模57兆円という大規模な今回の補正予算であると私は思います。この中で、失業手当のない人に職業訓練中の生活費を給付するなどの雇用対策や、中小企業の資金繰り支援など、緊急を要する諸課題にも対策を講じています。
 併せて私は“全治3年”の期間は単に「嵐」を乗り越えるだけであってはならない、次の日本に向け新たなスタートを切らなくてはならない3年間だと強く訴えてまいりました。本年1月の代表質問でも、五つの処方箋として、環境、農業、社会保障、社会資本整備、そして人間力を育む教育の五つの分野に力を入れようと提示いたしましたが、その内容が今回の補正予算案に具体的に入っております。
 「ただちに切れ目なく」「危機打開と未来への展望」が今回の補正予算案の主眼でもあり、何としても早期成立させなければなりません。総理の決意を承りたい。


太陽光、エコカー、省エネ家電普及へ
「日本再生の新たなビジョン」  
(1)緑の社会への構造改革──グリーン産業革命


 まず「緑の社会」への構造改革、グリーン産業革命であります。
 公明党は新たな経済対策の検討に当たって「ニッポンまるごと太陽光」「ニッポンどこでもエコカー」「ニッポンだれでも省エネ家電」と訴え、太陽光発電導入の抜本的加速、エコカー、省エネ家電の普及促進を求めました。これを受けて本補正予算案には、1万2000校に太陽光パネルの設置をめざすスクール・ニューディール構想、環境性能のよい新車の購入に最大25万円の補助、最大13%程度が還元されるエコポイントを活用した省エネ家電の普及促進が盛り込まれました。

 これらにより、景気対策低炭素社会づくりがともに強力に進められることになります。その上でさらに、今後導入される新たな電力買い取り制度についてはグリーンエネルギー産業を力強く後押しする優れた制度としていただきたい。
 また、国を挙げた地球温暖化対策と低炭素社会づくりに向けて、その目標や手段、手順等を定める基本法の必要性が高まっていると考えます。
 低炭素社会づくりを加速していくためには、国民が目標を共有することが大事です。私は2020年の中期目標は、新たな日本の経済成長につながる野心的なものであるべきだと考えます。以上、総理並びに環境大臣のお考えを伺います。


(2)日本農業の再生
構造改革で強い農業創出へ


 1兆円を超えた農林水産関係の補正予算案には、わが党がかねてから主張してきた「持続可能な強い農業の構築」の取り組みを中心に、手厚い支援が盛り込まれました。特に、担い手への農地集積の加速化のため約3000億円の支援をはじめ、新規就農の促進、集落営農の組織化、土地改良負担金の軽減、水田フル活用の取り組みの加速化などが盛り込まれています。

 さらに、喫緊の課題である耕作放棄地対策として、これを解消して、農地として利用・再生するための支援が行われます。画期的なことであります。その上で、申し上げたいことは、地域経済の活性化に直接結びつく農商工連携の充実強化であります。更なる支援が必要と考えます。また農地法を改正し、農地を「貸しやすく、借りやすく」できるように更なる推進を求めます。総理のご見解をお伺いします。


(3)社会保障制度の充実
医療・介護・子育て支援策の充実


 今回の補正予算案では、地域医療の機能強化をはじめ、介護職員の処遇改善、女性特有のがん対策や子育て支援の拡充など、国民生活の安心確保のために緊急に対応すべき施策が盛り込まれました。わが党の主張したものでもあります。
 がん対策では、女性特有のがんの検診率を高めるため、子宮頸がんの場合は20〜40歳まで、乳がんは40〜60歳までの5年刻みで、検診のための手帳と無料クーポンが発行されることになりました。

 今後はいつでも、どこでも自由に受けられるようキメ細かな制度設計が必要であります。また、これを契機に男性を含めたがん検診率50%をめざし、政府を挙げて取り組んでいくことが重要です。
 介護については、介護拠点の緊急整備とともに、介護分野を志す希望者が、生涯の職業として安心して働ける環境整備に繋げていくことが求められています。
 子育て支援では、子育て応援特別手当の対象を第1子へ拡大、安心子ども基金の拡充など、大いに前進がされました。

 私は、国民の安心確保のための社会保障の機能強化を何よりも優先していくべきと考えます。そして、従来の発想の延長ではなく、世界最速で少子高齢化が進むわが国において、地域の医療や介護事業に人材の流れを作り、国の戦略産業として育て、そのノウハウで世界に貢献していく、というビジョンを構築すべき時期にきていると確信していますが、この点について、総理と厚生労働大臣のご見解をお聞きします。


(4)地域活性化「社会資本ストックの整備の推進」
必要な公共事業へ先行投資を


 高齢社会に備える都市づくり、国際競争に勝ち抜く空港、港湾、道路などのインフラ整備を未来を見すえて行うことが大切です。そして、国民の安全・安心を確保するための防災・安全対策として、社会資本ストックの耐震化の推進、ゲリラ豪雨対策、洪水・高潮対策など、必要な公共事業をできるだけ前倒して執行することが大事です。

 その際、厳しい地方財政の現状を踏まえ、自治体にいかに配慮をするかが重要です。今回の補正予算では、約1・4兆円にも上る「地域活性化公共投資臨時交付金」が用意され、地方負担の軽減が図られるようになったことは評価したいと思います。
 今後重要なことは、公共事業の執行に伴う仕事が地域の中小企業への受注機会の拡大につながるよう配慮することであります。
 総理の社会資本整備と地域活性化への考えをお伺いします。


(5)アジアとともに成長する「日本」
アジアの需要を取り込む


 私は、世界的な経済危機克服の活路を開くためには、アジアを先導役とするしか安定した経済成長は望めない、Win・Winの関係でアジア全体の経済成長を図るアジア版ニューディールを日本が主導することが必要である、と主張してまいりました。

 総理は、アジアを「21世紀の成長センター」と位置づけ、「日本は、国境を越えてアジア全体で成長するという視点に立つことが大事」と述べられ、広域インフラの整備と産業開発の一体的促進や消費拡大のためのセーフティーネットの整備などを内容とするアジア経済倍増構想を提案されました。

 私は総理のご提案を高く評価するものであり、日本の環境技術の強みを生かし、また、アジアの中小企業の育成も進めながら、その具体化をアジア全体で早急に図るべきであると確信いたします。
 明日から日中首脳会談、5月上旬にはプーチン首相との日ロ首脳会談に臨まれますが、総理のご所見をお尋ねします。


税金のムダ遣いは絶対に許さず
行政改革の断行と消費者行政への転換
 


 総理、行政改革は待ったなしです。
 特に、国の出先機関については、業務が地方と重複し、国民から見て非効率な「二重行政」になっているとの指摘があります。この際、廃止・整理を強力に断行し、国の事務・権限を大胆に地方に移譲することが大事です。今こそ、21世紀にふさわしい効率的な行政の確立に向け、政治のリーダーシップを発揮すべき時と考えます。
 国民が行政に望むものは何か。それは、「税金のムダ遣いは絶対に許さない」ということです。行政のムダにどう切り込むか、強い姿勢を求めるものであります。また、消費者庁法案が全会一致で衆議院を通過いたしました。私は、法案の早期成立を望むとともに、さらに行政のすべての面で、生産者から消費者重視の考え方が貫徹されることを強く求めます。行政改革、消費者行政への転換は景気対策を執行する上でも極めて重要であると思いますが、総理のご決意をお伺いします。
 最後に、新型インフルエンザ問題が全世界的な大きな問題となっており、WHOは警戒レベルを4に引き上げました。政府は迅速に対策を打ち、国民の不安を払拭することに全力を挙げるべきです。総理のご決意を伺います。
 以上、この未曾有の経済危機を打開し、併せて日本の希望ある未来を切り開く総理のリーダーシップを強く望み、私の質問を終わります。


<麻生総理らの答弁要旨>


 麻生太郎首相】


 一、(経済対策について)景気の底割れを防ぎ、未来の成長力強化につなげるため、国費15兆円程度、事業費約57兆円の経済危機対策を取りまとめた。速やかに実行するため、09年度補正予算を一刻も早く成立させる必要がある。


 一、(アジア経済倍増構想について)同構想の早期実現に向け、アジア各国と協力していく。特に日中首脳会談では、アジア、世界経済の回復のため、今後とも日中が主導的な役割を果たすことを確認したい。


 一、(消費者行政への転換について)消費者庁は行政の在り方を消費者重視に転換していく突破口と考える。関連法案を早期に成立していただき、一日も早く同庁を設置したい。


 一、(新型インフルエンザ対策について)国家の危機管理上の重要課題であり、国際連携を密にし、水際対策や情報提供、国民の安心・安全確保に万全を期す。


 【斉藤鉄夫環境相


 一、(太陽光発電の新たな買い取り制度について)温室効果ガスの大幅削減につながるよう、できるだけ多くの人に安心して設置していただく制度にし
たい。
(公明新聞:4月29日)