「都市農業・新ビジョン試案とは」党都市農業振興PT座長 高木陽介 衆院議員

農地残す街づくり
営農のあり方と一体で議論を


問い


消費者に身近な都市農業への関心が高まっていますが、公明党プロジェクトチーム(PT)が提示した「都市農業・新ビジョン試案」について教えてください。 (東京都 M・I)


都市農業は安全・安心な食料を供給するだけではなく、緑と潤いのある住環境の形成、災害時の避難場所、さらに地域住民の交流や子どもたちの食育への貢献など実に幅広い役割を担ってきました。

 ところが、現在の都市計画制度は、宅地化や開発を優先する考え方が色濃く、市街化区域における農地保全への配慮は不十分です。また、市街化区域内の農業は、長い間、国の農政の対象外とされてきました。言わば都市農業は、街づくりと農業政策の“谷間”に置かれたような状態が続きました。

 都市農地は減る一方です。1985年に約18・7万ヘクタールあった全国の市街化区域内農地は、2007年には約9・3万ヘクタールへと、ほぼ半減しました。東京、大阪、愛知など3大都市圏の特定市(東京都23区含む)で「保全すべき農地」とされ、相続税納税猶予の適用を受けることができる生産緑地も徐々に減り、1・5万ヘクタールを割り込んでいます。公園と同様、公共性の高い都市農地と言えども個人の資産である以上、相続が発生するたびに縮小・分散を余儀なくされます。都市農家の高齢化も進んでいることから今、抜本策を講じなければ、一気に農地が減少する恐れがあります。そこで、これまで党都市農業振興PTで交わされてきた議論を集約し、新たなビジョンへ向けた座長試案を提示させていただきました。

 今回の試案は、「当面の対策」と「中長期的な課題」に対する基本的な考えで構成されています。「当面の対策」では、生産緑地制度の改革が軸になっています。現在、一団の農地で「500平方メートル以上」とされている生産緑地の指定要件を「300平方メートル以上」に緩和することや、市町村による買い取りへの国の補助制度の創設などを盛り込みました。さらに、生産緑地を個人以外の経営主体に貸し出した場合には、相続税納税猶予制度を適用できるようにする方向性を示しました。

* 「中長期的な課題」では、都市農業の基盤である家族経営と、農業体験農園などの市民参加型営農への支援強化を打ち出しました。その上で、市街地の中に長期にわたって農地を位置付けることになった場合の課題に言及しました。農地として永続性を持たせるためには、宅地などへの転用を厳しく規制せざるを得ません。その結果、土地の資産価値が大幅に下落することになります。厳格な転用規制が掛かった農地を活用する「担い手」の問題と、持続可能な農業経営のあり方を一体的に議論する必要があることを指摘しました。

 新ビジョンの具体化をめざし公明党として農家、都市住民、地方自治体の皆さまの意見をしっかりと伺い、3大都市圏の横の連携を密にして都市農業を守るために全力で取り組みます。


座長試案の骨子


生産緑地などの改革


▽一団の農地で500平方メートル以上の面積要件を300平方メートルに緩和

▽市町村の買い取りに対する国の補助制度を創設

▽国による積極的な営農支援策を実施

▽個人以外の経営主体への貸し出しに相続税納税猶予制度を適用


中長期的な課題


▽家族経営の基盤強化、市民参加型営農を支援

▽都市計画の中に農地を位置付け、保全・利用を検討

▽農地と「担い手」、農業経営のあり方を一体で議論

(公明新聞:5月6日)