人口減時代の内需支える柱

新経済対策で基金積み増し重点配分

高齢者雇用の確保


 世界的な不況で輸出が伸び悩む中、内需の拡大は日本経済にとって急務の課題だ。急速な少子高齢化と人口減少という問題にも直面する中、内需の拡大を進めるためには、高齢者の雇用を確保し、潜在的な消費需要を高めていくことが、必然的に求められる。

 高年齢者雇用安定法の改正で、近年、高齢者雇用は着実な前進を見せてきた。2006年4月からは、定年が65歳未満の企業は、65歳までの定年延長、継続雇用制度の導入、定年廃止のいずれかの選択を義務付けられた。この結果、08年6月時点では、義務化前の05年に比べ、60〜64歳の常用労働者数は約50万人、65歳以上では約22万人増加していた。

 しかし、昨秋以降の景気悪化で、高齢者の雇用は、今また厳しい状況に直面している。今後も人口減少が見込まれる以上、将来的な展望も踏まえた着実な対策を進めていきたい。

 すでに実施されている政府の一連の経済対策では、高齢者などの雇用安定のため、緊急雇用創出事業として、自治体が企業やシルバー人材センターに事業を委託し、一時的に雇用を創出している。

 事業例としては、多客期の観光地での案内や、商店街、公園、河川などの美化活動、農繁期の農作業支援、補助犬の啓発活動、学校安全警備員、違法駐車や迷惑駐輪の防止などが雇用の受け皿として挙げられている。

 さらに、新経済対策では、この事業を拡充し、都道府県に創設された基金に3000億円を積み増し、その分を、介護や福祉、子育て、医療、教育、治安・防災といった、人材確保などが強く求められている分野に重点配分する方針だ。

 高齢者の就業行動を見れば、これまで身に付けた知識や技能を生かせるか、を重視する傾向が強い。人材が求められる分野にあっては、高齢者の特性に合わせ、高齢者自身のこれまでの取り組みと継続性を持たせる丁寧な対応が必要だ。

 また、08年度第1次補正予算に盛り込まれた措置では、65歳以上の離職者を雇い入れた事業主に助成する「高年齢者雇用開発特別奨励金」が創設されたほか、「中高年齢者トライアル雇用奨励金」の対象者の年齢要件(65歳未満)が撤廃され、65歳以上の高齢者の雇用が促進されている。

 雇用開発特別奨励金は、1年以上継続して雇用する場合に、事業主に対して大企業なら50万円、中小企業なら60万円を助成。トライアル雇用奨励金では、高齢者などを試行的に雇い入れる事業主に対して、一人当たり月額4万円(最長3カ月)が支給される。こうした制度の活用も進めていく必要がある。


高齢期の生きがい


 元気な高齢者が経験や技術を生かし、働き続けることは社会の活性化につながるだけでなく、なにより高齢者自身の生きがいになる。

 高齢者雇用の着実な環境整備を進めていきたい。

(公明新聞:5月8日)