地方向け基金(補正予算)活用を


環境、福祉、子育てに重点
公明党の主張反映定例議会で具体化に全力
桝屋敬悟・党組織委員長(衆院議員)に聞く






衆院で審議中の今年度補正予算案には、環境、福祉、子育て支援などに重点を置いた地方向け「基金」などが数多く盛り込まれている。桝屋敬悟・党組織委員長(地方議会局長、衆院議員)に地方向け基金の主なポイントと公明党の取り組みについて聞いた。


 ――基金の内容は。


 桝屋 新たな経済対策を実行するための補正予算案には、46基金が盛り込まれていますが、このうち地方自治体向けの15基金の総額は2兆円を超えます。基金は環境、福祉、子育て支援に重点が置かれています。これは景気回復や地域再生といっても、国民一人一人の生活の安心がなければ実現できないとの公明党の主張が反映されたものです。


 ――「基金」を設けた理由は。


 桝屋 「全治3年」の経済危機を克服するには、単年度の予算措置だけでは対応できません。財政事情が厳しい地方自治体の負担を極力軽くしながら、国民生活のセーフティーネット(安全網)と地域活性化を同時に行うためには、複数年度にまたがって計画的に地方自治体を財政支援できる「基金」が必要です。


 ――具体的にどんな基金があるのか。


 桝屋 環境面では、低炭素社会への大きな一歩として地球温暖化防止対策に力点を置いています。新設の「緑の産業再生プロジェクト」は、森林の間伐からバイオマス利用工場といった木材加工施設の整備までを一体的に促進します。

 「地域グリーンニューディール基金」は、省エネ住宅の促進をはじめ、不法投棄の処理、漂流・漂着ごみの処理事業などを助成し、地域の活性化と低炭素化・エコ化を同時に後押しします。

 一方、基金ではありませんが、補正予算案には、学校耐震化や太陽光発電パネルの設置など「スクール・ニューディール構想」を促進する助成制度などの予算も計上されており、仕事を増やし、雇用創出や地域活性化を促す効果が期待されます。


 ――福祉面では。


 桝屋 公明党は3月、群馬県渋川市で起きた高齢者施設「静養ホームたまゆら」の火災直後に現地を調査。再発防止のため政府に緊急要請するなど、積極的に取り組んできました。そうした経緯から補正予算案では、社会福祉施設の耐震化促進のほか、有料老人ホームなどへのスプリンクラー設置を財政支援する基金の創設で、防火体制の強化が期待されます。

 また介護の現場で働く人をサポートするため、4月からの介護報酬3%アップに加え、職員のさらなる処遇改善のための基金や、特別養護老人ホームなど地域の介護拠点の整備を格段に進める基金も盛り込まれています。


 ――子育て支援は。


 桝屋 昨年度補正予算ですでに創設された「安心こども基金」を拡充します。具体的には、都市部の待機児童解消など保育サービスの充実や、ひとり親家庭への職業訓練のための資格取得にかかる費用をサポートします。さらに児童養護施設についても、施設の生活環境改善のほか、退所者の就業支援の促進に活用できます。

 このほか、保護者の経済状況が急変したため修学が困難になった高校生を対象に、授業料減免や奨学金を強力にバックアップする緊急支援も行います。


 ――補正予算案には地方自治体向けの臨時交付金もあるが。


 桝屋 地方活性化のための臨時交付金は財政状況の厳しい自治体に配慮して配分されます。これは、地球温暖化少子高齢化社会への対応など、補正予算案に盛り込まれたきめ細かな施策を積極的に実施するために手当てしたものです。交付金基金と併せて効果的に活用すれば、地方負担分をより軽くすることも可能です。


 ――今後の公明党の取り組みは。


 桝屋 これらの基金を活用するには、各都道府県で条例制定などの手続きが必要なため、自治体の役割が重要になるとともに、今まで以上に国と地方の連携が不可欠です。

 そのために全国3000人の地方議員を要するネットワーク政党・公明党は、6月の定例議会を中心に地域の実情にあった基金の具体的な活用を提案し、その実現に総力を挙げて取り組んでいく決意です。


施策(基金)名、事業規模及び、 事業の概要

緑の産業再生プロジェクト    1,238億円
森林整備(間伐)からバイオマス利用工場、発電所の整備までを地域で一体的に行う


地域グリーンニューディール基金    550億円
地球温暖化対策として、省エネ住宅や不法投棄、漂流・漂着ごみの処理事業を支援


社会福祉施設等の耐震化、スプリンクラー整備事業等    1,062億円
社会福祉施設の耐震化促進。有料老人ホームなどのスプリンクラー整備も助成


介護職員の処遇改善など      4,000億円
2009年度の介護報酬3%アップに加え、介護現場で働く人の処遇をさらに改善する


介護拠点などの緊急整備      3,000億円
地域のニーズに対応し、特別養護老人ホームグループホームなどを緊急に配備


安心こども基金      1,500億円
保育サービスの充実やひとり親家庭対策、自動養護施設の退所者への就業などを支援


高校生の授業料減免・奨学金事業に対する緊急支援      486億円
家計が急変し就学困難になった高校生に対し授業料減免や奨学金などでバックアップ


緊急雇用創出基金      3,000億円
解雇などで離職した非正規労働者、中高年齢者の一時的な雇用・就業機会の創出を支援


地域自殺対策緊急強化基金      100億円
相談(対面型・電話)や自殺防止のための普及啓発事業などを支援
(公明新聞:5月11日)