所有から利用へ力強く転換

「貸しやすく、借りやすい農地」に

農地法改正案


 農地法の基本理念を「所有」から「利用」に力強く転換する改正案が、今国会で成立する公算が大きくなった。先月30日の衆院農林水産委員会で、自民、公明、民主3党から提出された修正案が可決され、8日に衆院を通過したからだ。

 同法の改正は、公明党が主張してきた「貸しやすく、借りやすい農地改革」を大きく前進させるもので、与野党が垣根を越えて修正合意したことを率直に評価したい。

 1952年(昭和27年)に制定された農地法は、耕作者自らが農地を所有することを基本としている。しかし、農家の高齢化や後継者難が指摘され、農作物が作られずに放置されたままの耕作放棄地が増加傾向にある現実を見れば、「所有」重視の規定がかえって農地の利用を妨げていると言わざるを得ない。

 穀物価格の高騰や輸入食品の安全性への不安から、国産食品への需要が高まっている中、40%に低迷する食料自給率の引き上げは喫緊の課題だ。農地の所有から利用への転換は、まさに「待ったなし」といえよう。

 農地の利用が進まない背景には、農地価格の上昇から所有者が「いずれ高く売れるだろう」と転用を期待し、貸し出しに消極的なことがある。貸し出されたとしても農地が点在し、借り手が効率よく使える態勢になっていない。

 改正案では、農地の減少に歯止めをかけるために転用規制を強化しつつ、農地の有効利用を後押しする、との二つの方向性を示した。

 転用許可が要らなかった学校や病院などの公共施設の設置に対しても、許可権を持つ都道府県知事と国が協議するようにする。これは、学校などが建つことで周辺開発が進むのを防ぐことが狙いだ。

 農地の有効利用のためには、まず所有者がきちんと利用することが大前提だ。その責務を法律上、明確にする。その上で、自ら利用できない場合に農地を貸しやすいように、貸し付け農地でも相続税の納税猶予を受けられるようにする。

 借り手側に対しては規制を緩和し、企業の農業参入を原則自由化する。さらに、借り手が効率的に使えるように、市町村などが所有者の委託を受け、まとまった農地を貸し付ける仕組みを設ける。

 民主党との修正協議では、企業が農業に参入する際、役員のうちの1人以上を常時、農業経営に従事させることなどで合意した。


補正で農地集積を加速


 衆院で審議中の2009年度補正予算案には、農地の集積をさらに加速化するため、今後3年間に農地を貸し出した所有者に対して、10アール当たり年1万5000円の交付金を、最長5年間支給する事業が盛り込まれている。

 意欲のある人に農地が集まるようになれば、農業活性化に希望が持てる。農地の流動化促進に期待したい。

(公明新聞:5月11日)