行政・医療機関の連携密に

全国にまん延の可能性 軽症者多く、対策切り替えへ

新型インフルエンザ


 わが国の新型インフルエンザ対策は転換点に立った。舛添要一厚生労働相は18日の会見で、「感染力や病原性などは季節性インフルエンザと変わらないとの評価が可能」と述べ、強毒性の鳥インフルエンザの発生を前提とした政府の行動計画から、軽めの症状に合わせた対策に切り替える方針を表明した。今回の新型インフルエンザが弱毒性で、多くの人が軽症で治っている実態を考慮したものだ。

 過度に不安感を募らせるのではなく、個人やあらゆる組織がマスクの携帯・着用や、うがい・手洗いの励行、咳エチケット、社員の健康管理など、冷静に日常の予防策を心掛けたい。

 同時に厚労相は「全国にまん延している可能性がある」との認識を示した。兵庫や大阪の現実は、決して“人ごと”ではない。


 水際対策以外で、国内で初めて感染者が確認されたのが16日。それがわずか2日間で兵庫県大阪府で感染者は150人を超え、休校の決定は4000校以上となった。企業活動にも影響が出ている。あっという間に感染者が地域で急拡大し、行政の相談窓口も感染症病床もパンク状態に陥ってしまう。


 こうした今回の新型インフルエンザの感染の特徴を踏まえつつ、感染が他の地域でも早期に起こることを前提に、国はまん延期に対応した具体的な対処方針を早急に策定しなくてはならない。この点については、18日の公明党新型インフルエンザ対策本部でも、党側から政府に対して強く要請が出された。また、海外の事例では、高血圧や糖尿病などの疾患を持っている場合、感染すると重症化することが多いとの報告があることを踏まえ、情報収集と重症化のリスクのある人への対応策の検討を強く要望した。


 一方、与党新型インフルエンザ対策本部と同プロジェクトチームは18日、国会内で河村建夫官房長官と会い、感染拡大防止対策に関する留意点を申し入れた。主な内容は、(1)地方自治体と医療機関の連携体制の確立(2)感染患者を専門的に診察する「発熱外来」の広報活動の強化と、発熱外来設置の基幹病院と他の医療機関の綿密な連携(3)地方自治体と医療機関への財政支援(4)保育所の臨時休業で託児できずに休業せざるを得ない従業員への不当な取り扱いの防止(5)医療従事者や母子・父子家庭などの保育の確保(6)地域における24時間ワンストップ相談体制の整備(7)国や地方自治体の要請に基づく休校や休業による特別な損失に対する補償制度の創設(8)イベント・行事の中止や観光産業などの影響に対する適切な支援措置の検討――などだ。早期の具体化を求めたい。 


地域での備えは万全か


 全都道府県に発熱外来は設置されているものの、具体的な運用の手順は明確だろうか。一般医療機関のまん延期の診療継続計画は策定されているだろうか。医薬品や医療従事者などの感染防護具の備蓄は十分か。万全の備えを急ぎたい。

(公明新聞:5月20日)