新しい司法参加の時代開く

分かりやすく迅速な刑事裁判へ

裁判員制度スタート


 裁判員制度を導入するための「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員法)」が、きょうから施行される。

 裁判官3人と国民から抽選で選ばれた裁判員6人が対等の立場で審理を進め、判決を決める裁判員裁判が実際に始まるのは7月ごろ。裁判員裁判の対象犯罪は、殺人罪や強盗致死傷などの重大犯罪であり、地方裁判所で行われる第1審を担当する。

 裁判員制度は、国民の司法参加を大きく進める画期的な改革であり、憲法三原則の一つ「国民主権」の具体化である。

 裁判員法が成立した2004年の通常国会では、憲法裁判員制度の関係が正面から議論され、国民の良識を裁判に反映させることが司法民主化につながるとして、衆院本会議では全会一致で、参院本会議でも180対2の圧倒的賛成多数で可決、成立(5月21日)している。

 確かに、国民にとっては裁判員になることは義務であるものの、新たな負担となる。しかし、この義務は民主主義を深化させるために必要な役割である。視点を変えれば、この義務は、国民が司法に参加するための権利と考えることもできる。

 裁判員法成立直後の04年5月27日、衆院憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会に参考人として出席した早稲田大学法務研究科の田口守一教授は、席上、「あるフランスの人が言ったことで、義務というのは権利の別名という表現がある。私は裁判員になるのは苦役であり義務であり、いいことは何もないという理解はやや一面的と思う。…(中略)…国民として人を裁くような重大な場面に参加することによって、その人自身が大きな体験をするということが権利でもあるという側面も考えるべきと私は思っている」との見解を示した。

 裁判員制度が、憲法に定めのない新たな義務を国民に課している点を取り上げて「違憲」とする立場は、司法参加を権利ととらえる考えから見ると、確かに一面的にすぎよう。

 裁判員制度のモデルである参審制度をもつフランスとドイツでも、参審制のことは憲法に定められているわけではない。しかし、司法民主化の当然の制度として運営されている。また、G8サミットの参加国で刑事裁判への国民参加制度がないのは日本だけという事実も知る必要があろう。


法曹が準備に汗流す


 裁判員法が成立してからきょうまでの5年間、弁護士、裁判官、検察官の法曹三者は激務の合間を縫って、研究会や模擬裁判を通して、法律の素人である国民を法廷に迎え入れるための準備に汗を流してきた。模擬裁判を見ると、明らかに従来の刑事裁判とは変わった。法廷では法律用語が分かりやすく言い換えられ、評議の場では裁判官が裁判員の良識をくみ取ろうと真剣に耳を傾けていた。

 いよいよ本番。裁判員制度という「国民が主役の司法改革」をぜひ成功させたい。

(公明新聞:5月21日)