夢ふくらむ 宇宙太陽光発電


昼夜、天候などに左右されず 静止軌道上で24時間の安定発電が可能
エネルギー 電磁波に変え地上に伝送
JAXAで研究進む









宇宙空間で太陽のエネルギーを集め、それを地上に伝送して電力などに利用する「宇宙太陽光発電」構想が注目を集めている。政府が4月に発表した「宇宙基本計画(案)」にも盛り込まれた。宇宙航空研究開発機構JAXA)や経済産業省で研究が進められている、夢ふくらむ宇宙太陽光発電システム(SSPS)の概要を紹介するとともに、同システムの実現を積極的に推進している斉藤鉄夫環境相公明党)に話を聞いた。

 太陽光発電は、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないクリーンなエネルギーシステムとして知られている。

 しかし、地上での太陽光発電は、夜間の使用ができない上に、雨や曇りなどの天候に大きな影響を受けてしまう。一方、宇宙空間で発電を行った場合、24時間、天候に左右されることなく安定的に発電することが可能であり、発電の効率性は地上に比べて約10倍も高いことが分かっている。

 こうした安定性やエネルギー効率の良さ、資源枯渇の恐れがないことなどに着目したのが、SSPS構想だ。1968年、米国の研究者によって提唱され、以後、欧米各国で研究活動が進められている。日本では80年代から研究が始まり、現在もJAXAをはじめ、各大学などでも活発な研究が行われている。

 SSPSは、地上約3万6000キロメートルの静止軌道上の宇宙空間に設置された太陽光発電衛星(宇宙プラント)と、地球上に設置された受電アンテナなどの地上プラントから構成される。

 SSPSについてJAXAでは、同衛星が太陽エネルギーを電磁波(マイクロ波やレーザー)に変えて地球に向け送信し、それを地上のアンテナで受信した上で、さらに電力や水素に変換する仕組み【イラスト参照】を検討している。このうちマイクロ波に変換する方式については、宇宙空間におのおの1〜3キロ規模の反射鏡、太陽電池、送電アンテナを配置することで、原子力発電所1基分に相当する100万キロワットの発電ができると想定されている。


物資輸送のコスト軽減化などが課題


 ただし、実現化までには克服すべき課題も多い。

 特に、衛星建設に必要な物資をロケットなどで打ち上げる輸送コスト(費用)が高額であり、経済的に見合うためには、現行コストを100分の1まで下げる必要がある。また、現段階の技術では、地上間においてマイクロ波で電力を送信する実証実験は成功しているが、そのマイクロ波を宇宙から地球上の狙ったところに正確に送信する技術(位相制御技術)は、まだ確立できていない。

 SSPSの研究を行っているJAXA高度ミッション研究グループの佐々木進グループ長は「今後数年間で、まず地上間での位相制御技術を完成させた上で、その後、小規模な衛星を使った実証実験ができるように研究を進めていきたい」と話していた。


マイクロ波方式で基礎的調査を実施
送受電技術の確立めざす 経産省


 経産省は00年以降、エネルギーの安定供給や環境対策などの観点から、SSPSに関する、本格的な調査研究に乗り出している。

 04年度から07年度にかけては、同省所管の財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)に委託し、マイクロ波方式のSSPSの実現に向けた技術課題の抽出や安全性・経済性の検討など、基礎的な調査を実施した。09年度は、マイクロ波による無線送受電技術の確立のため、精密ビーム制御技術の研究開発を行う予定で、今後はJAXAとも連携しながら、さまざまな研究開発を進めていく方針だ。


低炭素社会へ有望な手段 宇宙開発戦略本部で重要性を主張
斉藤鉄夫環境相公明党


 宇宙太陽光発電は、低炭素社会を実現する上で大変に有望な手段の一つであり、環境省としても非常に注目しています。

 私は衆院議員になる前、民間企業に勤めていたころから、太陽光発電衛星の開発、設計に携わってきました。議員になってからも、国会の場で、化石燃料に代わる次世代エネルギーとして、研究開発の促進を推進してきたところです。

 現在、環境大臣としても宇宙開発戦略本部において、積極的に後押しし、「宇宙太陽光発電は、環境問題の解決に非常に大きく寄与する技術である」と、その重要性を主張しています。

 4月28日時点で同本部が示した宇宙基本計画(案)では、宇宙太陽光発電について、「3年程度を目途に、大気圏での影響やシステム的な確認を行うため、『きぼう』や小型衛星を活用した軌道上実証に着手する」と明記されました。さらに「10年程度を目途に実用化に向けた見通しをつけることを目標とする」との文言も盛り込まれており、これまで“夢”だと思われていたSSPS構想が、政府を挙げて具体的に進み始めることになりました。今後も、研究の動向を見守りながら、関係省庁と連携して、応援に全力を挙げたいと思っています。(談)

公明新聞:5月22日)