低所得者への減税が手厚く

子育て支援としての有効性にも期待

給付つき税額控除


 減税と給付金を組み合わせた「給付つき税額控除」の導入に向けた機運が高まり始めた。

 19日の政府の経済財政諮問会議(議長=麻生太郎首相)では、民間議員が低所得者や子育て世帯への支援策として、給付つき税額控除の検討を提言。政府税制調査会(首相の諮問機関)も22日、給付つき税額控除に関する勉強会を開き、導入への課題などで意見を交わした。

 給付つき税額控除はすでに米、英両国で実施され、その高い効果は実証済み。カナダや韓国などでも導入が進み、今や「世界の潮流」と言っていい。

 就労、子育て支援などが導入の狙いだが、程度の差こそあれ、これらは主要国で共通の課題だ。わが国でも実施となれば、高い効果が期待できよう。

 給付つき税額控除は減税を行う際、引き切れない分を社会保障給付として還付する仕組み。主な特徴として、2点を挙げたい。

 一つは、減税政策の中で低所得者への恩恵が手厚い点だ。

 政府が所得減税を行う場合、所得控除(所得金額から一定額を差し引く措置)を拡充するケースが考えられるが、所得控除は所得が低く、納税する必要のない人にはまったく意味がない。いわば、所得が多い人ほど減税額が大きい制度だ。

 これに対し、給付つき税額控除は、税額から一定額を差し引き、控除額が納税額を上回ったとしても、その差額が還付されるため、所得控除に比べ低所得者が受ける恩恵は大きい。

 厚生労働省が21日に発表した最新の「国民生活基礎調査」では、2007年で所得が平均より低い世帯が6割に上り、200万円未満の世帯は18.5%にも達した。

 こうした実態を見れば、わが国でも低所得者支援は待ったなしの課題だ。この打開策として、給付つき税額控除を活用するのも一つの選択肢といえよう。

 二つ目の特徴は、就労、子育て支援とリンクさせることで、より有効性が高まる点だ。

 米、英両国では、就労所得や時間、子どもの数に連動して控除額が増える制度を設計し、これにより英国では就業率が大きくアップした。

 わが国でも、経済苦境が続く子育て世帯への支援として、実態に合わせた形で給付つき税額控除を導入すれば、やむなく生活保護に陥ってしまう事態の改善に役立つであろう。


導入には課題も


 一方、導入には課題も少なくない。

 例えば、納税者番号制度の導入などで国民一人一人の所得を正確に捕捉する必要があるほか、税務当局と社会保障官庁との連携強化や、不正給付を防ぐ手立てなども万全にしなくてはならない。

 いずれも難題だが、いくつもの優れたメリットがある以上、安易に放棄するわけにもいかない。導入への“芽”を簡単につぶすことなく、精力的な議論の積み重ねを期待したい。

(公明新聞:5月29日)