「現役の50%確保」大丈夫

「年金」めぐる報道で坂口副代表(元厚労相)に聞く
所得再分配で 低所得者に手厚く

年金財政を検証した厚生労働省作成の資料をもとに、厚生年金の給付水準が政府公約の50%を下回るかのような報道が各マスコミで取り上げられています。坂口力副代表(元厚労相)に聞きました。


 ――マスコミで「共働き・男単身世帯/年金 現役の4割以下」(読売)などと報じられました。


 坂口 これは、2004年の年金改革の時に既に試算されていたもので、今回初めて出た数字ではありません。共働きの所得代替率についてみると、「2050年度で39・9%まで下がる」との試算が報道されていますが、04年改革の時点で既に「39・3%まで下がる」とされていました。逆に0・6ポイント上がっています。


 ――政府公約の「給付水準50%確保」は大丈夫ですか。


 坂口 大丈夫です。将来の年金額については、「月額××万円」と金額で示しても、物価や賃金は時代とともに変わって年金の価値が分からなくなるため、「その時々の現役世代が受け取る平均手取り賃金の何%もらえるか」(=所得代替率)で、給付水準を示しています。
 04年改革では、モデル世帯(平均的賃金をもらっていた夫が20〜60歳まで厚生年金に加入し、妻が40年間専業主婦の世帯)で「50%を上回る給付水準を将来にわたり確保する」ことを法律に明記しました。
 今回の試算でも、50年度時点でのモデル世帯の給付水準は「50・1%」で、これも大きな変化はありません。


 ――報道では、「夫婦共働き世帯や単身世帯は40%以下」としています。


 坂口 これは、世帯1人当たりの所得水準によって所得代替率が変化するよう設計されているからです。
 年金制度は、子の世代から親の世代への“世代間の仕送り”をする制度であると同時に、世代内でも所得の多い世帯が少ない世帯を助ける「所得の再分配」の機能が働くようになっています。
 新聞報道を見ると、共働き世帯や単身世帯はすべて所得代替率が40%以下になると誤解しがちですが、共働きかどうかなど世帯の類型がどうであれ、「世帯1人当たりの所得が同じなら、所得代替率も同じ」なのです。共働きでも所得が低ければ50%以上の代替率となります。


 ――高所得者は、所得代替率が低くなる、ということですね。


 坂口 はい。夫も妻も正社員で、2人とも平均的な所得を得ていれば、厚生年金の保険料を2人とも納めているので、モデル世帯よりも年金額は当然多くなります。高所得者であるため所得代替率は下がりますが、年金額で見れば、モデル世帯よりも多くなります。


 ――モデル世帯は実態に合っていないとの指摘もあります。


 坂口 労働力調査をもとに、「共働き世帯が52・5%と過半数であり、専業主婦世帯をモデルにするのはおかしい」といわれますが、実際はパートなど短時間労働が多く、夫婦とも厚生年金に加入(第2号被保険者)している世帯は32%程度です。サラリーマン世帯の65%は、妻が第3号被保険者であるのが実態です。


 ――モデル世帯で代替率が50%を下回ることはありませんか。


 坂口 法律にそう明記をしたわけで、政治が責任を持って50%を守ります。そのための経済運営、景気・雇用対策、少子化対策をしっかり行っていくことが政治に課せられた責任です。


 ――より安心な年金制度へ、公明党の考え方は。


 坂口 実際の年金額をみると、生活が困難な人が多いのも事実です。そこで、公明党は年金額を“かさ上げ”する基礎年金加算制度の創設を検討しています。
 具体的には、年収200万円未満の年金受給者には、基礎年金に対する国庫負担を50%から60%にしたい。そうすると、基礎年金の部分は、満額が現在の月額6万6000円から8万3000円にアップ。ご夫婦で16万6000円になります。
 ほかにも、基礎年金の受給資格期間(現行25年)の10年への短縮など、老後の生活の柱である年金制度の一層の改善に向け、公明党は全力で取り組んでいきます。

(公明新聞:5月30日)