多重債務防止へ対策が前進

規制強化で悪質業者の排除を促す

貸金業法の一部施行


 多重債務の防止へ貸金業への規制強化を盛り込んだ貸金業法の一部が18日、施行された。

 同法は2006年12月に成立。消費者保護を強く訴え、法案策定をリードしてきた公明党の取り組みが実って、「公明党の主張をすべて受け入れた内容」(06年10月25日付 読売新聞)となった。

 夜間に加え、日中のしつこい取り立てへの規制などは、すでに施行済み。多重債務に関する相談窓口の整備も進み、市区町村の約9割に設置された。こうした中、07年3月から09年3月の間、消費者金融の無担保・無保証の借り入れが5件以上ある人は約100万人も減少した。

 だが、これで多重債務者が完全にいなくなったわけではない。

 警察庁が発表した08年の自殺者の動機では、「多重債務」が前年より約1割減ったが、「失業」や「生活苦」は大幅に増加した。この中には、生活苦のあまり、高金利の借金に手を出し、返済に苦しんでいた人も少なくなかったのではないか。

 ここにきて景気は持ち直しの動きを見せているものの、すぐに本格軌道に乗るとは考えにくい。多重債務対策の手綱は決して緩めてはならないのだ。

 今回、施行となったのは貸金業者の参入条件の厳格化など。

 従来、貸金業の登録に必要な純資産は300―500万円だったが、これを2000万円にまで引き上げた。

 また、法令順守のため、助言や指導を行う「貸金業務取扱主任者」の資格試験を新設、合格者を営業所ごとに配置することも義務付けた。

 これで財務基盤や営業手法に問題のある業者は退場を余儀なくされ、消費者保護が一段と強化されよう。

 貸金業者が借り手の借入残高を把握しやすくしたのも今回施行となった項目の一つ。

 具体的には、借り手の信用情報を適切に管理している信用情報機関を「指定信用情報機関」とし、機関同士の情報交換を促す。

 貸金業者による借り手の返済リスクの把握が不十分だったことが多重債務を生む温床だっただけに、こうした措置を講じる意義は大きい。

 なお、上限金利の引き下げ(29・2%から20%)に伴う「グレーゾーン金利」の撤廃や、借入残高を借り手の年収の3分の1に抑える総量規制は来年6月までに施行される予定だ。


消費者に周知徹底を


 気掛かりな点もある。

 日本貸金業協会が行った消費者金融利用者の調査によれば、一連の規制強化について約8割が知らなかったという。いざ資金が必要な時に消費者が混乱しないよう、規制内容の周知徹底を強化しなければならない。

 貸金業規制の強化に伴うヤミ金の横行にも警戒を強めるべきだ。ヤミ金に走る前に、消費者向けセーフティーネット(安全網)である「生活福祉資金貸付」(社会福祉協議会が実施)などの活用を強く呼び掛けたい。
(公明新聞:6月22日)