重症者を社会全体で守ろう

医療機関での診療体制構築を急げ

新型インフルエンザ


 新型インフルエンザ対策に関して、厚生労働省が医療の確保や検疫、学校・保育施設への臨時休業要請などに関する運用指針を改定した。世界保健機関(WHO)が警戒水準を世界的大流行(パンデミック)を意味する「フェーズ6」に引き上げたことを受け、国内で秋冬に想定される感染者の大量発生を見越したものだ。

 基本的な考え方は、重症患者の救命を最優先するもので、(1)重症患者の増加に対応できる病床の確保(2)妊婦やぜんそく・糖尿病などの基礎疾患を持っている人への感染防止対策の強化(3)感染拡大および、ウイルスの病原性や薬剤耐性の変化を早期に探知する監視の実施――などに集約される。

 医療体制の外来部門は、発熱外来を実施している医療機関のみならず、原則として全医療機関で診療を行う。入院は原則として行わず、自宅療養を基本とするが、重症患者については感染症指定医療機関以外の一般病院でも受け入れる。

 検疫は、入国者全員への十分な注意喚起と国内対策の変更に応じた運用へ転換する。

 秋冬といっても目前だ。各地域ごとに早急に態勢を整えなくてはならないが、問題は全医療機関での診療といっても、掛け声だけでは進まないことだ。院内感染防止のための一般患者と発熱患者の待合場所の分離や診療時間の延長、さらに医師や入院病床の確保など、体制整備のための医療機関の負担は大きい。国や自治体の具体的な支援が求められる。

 そこで注目を集めているのが仙台市の例だ。同市では既に、感染者の発生初期段階から、市内のほとんどの医療機関が診療に当たる体制を構築している。実現までには、市と医師会との間で協議が重ねられ、市が積極的に医療機関を支援することになった。具体的には、市が事務職員の分まで含めて、医療従事者用マスク1人当たり50枚と予防投与用の治療薬を配布した。

 医師会や各医療機関は対応を真剣に模索している。都道府県・市町村は支援のあり方について、医療提供側との具体的な協議を促進してもらいたい。

 この問題で、国の支援が不可欠なのは言うまでもない。2009年度補正予算に盛り込まれた「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」が、各種の新型インフルエンザ対策に活用できることになっているが、感染拡大の度合いと感染終息までの期間によっては、さらなる追加支援策の検討が必要となろう。


集団感染の早期探知を


 また、地域における集団感染をいかに早く探知するかが、感染拡大を抑える急所。監視体制のより一層の強化が望まれる。

 そのほか、どうしても職場を休めない親の子どもの保育の受け皿確保など、課題は山積している。新型インフルエンザとの攻防は、長期戦の入り口に立ったばかりだ。一時しのぎの対応では乗り切れない。一つ一つの課題に具体的かつ迅速に結論を出す必要に迫られている。

(公明新聞:6月23日)