患者の悲願、病名認定が実現

公明党もかねてから主張 10月から保険請求が可能に

化学物質過敏症


 「患者の悲願達成!」――化学物質過敏症の患者の間で喜びが広がっている。10月から、化学物質過敏症の病名で医師が保険請求できることになり、病気に関する社会的な理解と患者の自己負担軽減につながるものと期待されるからだ。

 従来は化学物質過敏症の病名をつけて医師が保険請求してもほとんど認められず、患者の自費診療となるか、医師が症状によって類似の病名をつけて保険請求するしかなかった。

 それが、社会保険診療報酬支払基金と財団法人・医療情報システム開発センターが10月1日から、診療報酬明細書や電子カルテで使用する病名リストに新たに化学物質過敏症を加えることで、確実に保険請求できるようになる。

 化学物質過敏症とは、微量の化学物質に反応し、頭痛や筋肉痛、持続する疲労感、関節痛、集中力・思考力の低下、精神的不安定など、人によってさまざまな症状が現れる病気。

 原因となる化学物質は、建材や塗料、接着剤から放散されるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物のほか、農薬、殺虫剤、有機溶剤など、屋内外を問わず多岐にわたり、重症になると、仕事や家事ができない、学校へ行けないなど、通常の生活さえ営めなくなる。誰もが発症の可能性がある“環境病”であり、国内の成人患者は70万人と推定され、子どもを含めれば100万人ともいわれる。

 公明党は1990年代から化学物質過敏症の患者団体から要望を受け、先端治療施設の視察や原因となる化学物質の規制強化などに取り組み、2001年4月には総合的な化学物質過敏症対策を含む提言「『アレルギーフリー社会』の構築をめざして」を発表し、その実現に全力を挙げてきた。病名認定に関しても、2000年2月の参院国民福祉委員会で、国が早急に病名認定を行うよう訴えていた。

 明らかな体調不良にもかかわらず、医師から「異常なし」と言われてしまう潜在患者は多数いると見られ、こうした中で、化学物質過敏症の病名が“公認”された意義は大きい。

 NPO法人化学物質過敏症支援センター」の広田しのぶ事務局長は、「患者救済へ、階段を一つ上がった」と評価する。


「市民権」が得られた


 また、治療の第一人者として知られる宮田幹夫・北里大学名誉教授は、「患者にとって非常にありがたい。『市民権』が得られたことで、患者が化学物質過敏症の診断書を持参した際、これは何だと言われることがなくなる。生活保護を受けている人は病名がつくことで医療扶助が受けられる」と語る。

 ただ、まだまだ課題も多い。一人の患者の話に耳を傾けるのに30分以上かかる場合も多く、治療に当たる医師が少ない。原因となる化学物質を特定するのに欠かせないクリーンルームを設置する医療機関は、経営上の問題などから減少している。病名認定を弾みとして、医療提供体制の強化が求められる。
(公明新聞:7月27日)