国際社会に対する責任果たせ

重視される「人間の安全保障」の視点

9・11テロから8年


 世界を大きく変えた2001年9月11日の米国同時多発テロから、きょうで8年になる。

 これまでのテロ対策関連条約が示すように、テロは基本的に犯罪として位置付けられてきた。これによって、条約加盟国は種々のテロ行為を国内法上の犯罪とし、取り締まりの責任を負ってきた。ところが、9・11テロはこれまでのテロの次元をはるかに超える衝撃を与えた。

 9・11テロが国際テロ組織アル・カイダによって行われ、そのアル・カイダアフガニスタンタリバン政権に支援されていたことから、米国は自衛権を行使して英国など同盟国とともに同年10月にアフガニスタンへの武力攻撃を開始した。

 自衛権がテロリストに対して行使できるかどうか議論もあったが、9・11テロ後に国連安保理が採択したテロ非難決議は自衛権に言及し、米国とその同盟国が国連憲章に従って自衛権行使を国連に報告した際も問題にされなかった。しかし、この武力行使がテロ対策を複雑にしたことは否めない。

 武力行使の結果、タリバン政権は倒され、04年に新憲法が制定され新大統領が就任した。しかし、今年8月の大統領選挙は不安定な治安状況の中で実施されるなど、国家再興はまだ道半ばである。こうした状況を受けオバマ米政権は、テロ対策の軸足を軍事作戦から国づくり支援に移し始めている。

 テロリストを生む理由として、極端な思想・信条とともに、貧困や社会不安が挙げられる。特に、貧困や社会不安を解決するためには、軍事活動による治安確保だけでなく、時を置かずに国家復興のための支援を続ける必要がある。これは、武力紛争後に行われる「平和の定着、国づくり」としての平和構築活動の必要性と同じ考え方だ。


洋上補給でも実績


 この国づくりは大事業であり、国際社会が総掛かりで進めなければならない。テロ対策は国内法整備や法執行活動など国内的努力だけでなく、テロの温床を無くすために国際社会が取り組むべき支援にも責任をもって協力しなければならない。

 日本は平和憲法によって海外での武力行使はできない。しかし、武力行使に当たらない分野や、戦後復興を成し遂げた自らの経験を生かせる国家復興の分野では大きな貢献ができる。

 前者の例として、アフガニスタンからの麻薬・武器の出入りを阻止するためにインド洋で活動中の各国艦艇に対し海上自衛隊が01年以来続けている洋上補給活動がある。また、後者の分野として、日本はアフガニスタン復興で重要な役割を担ってきたし、復興支援の基本とされるべき「人間の安全保障」の理念を国連の中で積極的に実践してきた経緯もある。

 国家の安全でなく、個人の安全に焦点を当てる「人間の安全保障」は、政策理念としてテロ対策でも重視されている。政府は引き続き国際的なテロ対策への支援を続ける責任がある。
(公明新聞:9月11日)