インタビュー 焦点を聞く “法政大学大学院 政策創造研究科教授 小峰 隆夫氏”

“成長要素”なき経済政策
国債の大量発行で景気再失速の恐れも
第3、第4の政党 の発言力が重要に

民主党政権で最も懸念されているのが経済政策。成長戦略や財源などについて、日本経済論が専門の法政大学大学院政策創造研究科の小峰隆夫教授に聞いた。


 ――民主党の経済成長戦略をどう見るか。


 小峰隆夫・法政大学教授 経済が成長してパイ(総量)が大きくなれば、その分け前が国民に及び、国民の生活が豊かになる、というのが経済政策の基本だ。民主党の政策は、どうやって経済を成長させて、パイを大きくしていくのかという要素がほとんどないに等しい。


 民主党子ども手当など、家計に所得を分配することで消費が増え、内需主導型の成長ができると主張しているが、これはパイをどう切り分けるかという問題で、パイそのものを大きくする、成長させるということにはならない。


 ――民主党は矢継ぎ早に概算要求見直しや補正予算の執行停止などを打ち出しているが。


 小峰 前政権で作った補正予算景気対策だから見直すことだけ強調するとせっかく実行してきた景気対策が頓挫し、かえって景気に悪影響を及ぼすことになる。民主党は今までの政策の継続性をある程度、重視しながら、徐々に新しい政策を実現していくべきだ。


 ――民主は政策の財源が確保出来なかった場合、国債を大量発行せざるを得ないのでは。


 小峰 本当に子ども手当や高速道路無料化の財源があるのか。恒久的な財源は出てこないのではないか。特に子ども手当は金額が相当大きい。


 財源について、特別会計を合わせて200兆円以上予算があり、そのうちの5兆円程度をカットすればいいというが、本当に削れそうなのは全体の2割程度だ。全体の2割の中で5兆円出すことになる。削れそうな中には人件費も入る。足りないから赤字国債を発行となってしまうと景気再失速につながる最悪のシナリオになる。赤字国債を出さなければならないならば、マニフェストを修正する方がまだいい。


 ――内需拡大だけではなく、外需も取り込んだ成長戦略が必要ではないか。


 小峰 内需拡大の考え自体は正しいが、輸出はほどほどで、内需だけでやりましょうでは難しい。輸出も内需も両方増やさないといけない。そこは二本立てでいく方がいい。


 ニューヨークタイムスの電子版に載った鳩山由紀夫代表の論文を読んだが、これは衝撃的な内容だ。アメリカ主導のグローバル資本主義の時代は終わった。日本はこれからアジアと一緒になって通貨統合をめざしていくと書いてある。ちょっと信じられないような内容だ。軌道修正に相当、時間が掛かるだろう。


 官僚主導主義から決別するというのも気掛かりなところだ。いかに官僚を使っていくかが、政治家の腕の見せ所。単に官僚を排除するのでは全く前に進まない。


 ――公明党の役割について。


 小峰 今回、民主党が大勝したが、第3、第4の中間政党がどのような発言力を持つかが重要になる。公明党は二大政党外のアイデンティティー(主体性)をもっと確立し、ぜひ、独自の発言をしていくべきだ。

(公明新聞:9月11日)