景気回復の芽を摘む恐れ

問われる次期政権の決断と実行力

「補正凍結」に不安


 民主党による今年度補正予算執行の一部凍結方針と、来年度予算概算要求の白紙化という主張に対し、景気への悪影響を懸念する声が日増しに高まっている。経済は最悪期を脱したとはいえ、依然、楽観できる状況にはない。景気の腰折れを防ぐ、慎重な判断が求められている。

 民主党は、補正予算の執行を一部中止することで、子ども手当などの公約に掲げた政策の財源を確保する考えだが、問題点は少なくない。

 すでに国の補正を使って事業を始めている地方自治体の反発は強い。景気対策として組まれた15兆円規模の補正予算のうち8兆3000億円が未執行とされているが、だからといって、その額が、そのまま財源として使えるとは考えにくい。

 全国知事会麻生渡会長(福岡県知事)は、補正凍結方針について、「自治体は(補正予算を財源に)雇用・医療対策などを進めている。(地方の)実態を考えてほしい」と強調。また、京都府山田啓二知事も「今の経済雇用情勢は最悪。やるべきものは財源振り替えをしてもやる」と述べており、必要があれば、国の基金を充てる予定の事業を府の予算で執行する考えを示している。

 さらに、「全部止めると言われたら、どこの自治体もひっくり返る」(平井伸治鳥取県知事)といった声のほか、東国原英夫宮崎県知事は、補正予算が凍結された場合には、国に対し法的措置も辞さない、と強く反発しており、事はそう簡単には進まない。

 また、民主党は、各省庁が準備していた来年度(2010年度)予算の概算要求についても白紙化を主張。10月半ばをメドに再提出を求めるというが、予算編成の遅れは、ただでさえ深刻な地方の財政に悪影響を与える可能性がある。

 経済全体を見ても、4―6月期国内総生産(GDP)成長率はプラスに転じたとはいえ、それを支えたのは、定額給付金エコカー支援、エコポイントなどによる個人消費の回復と、公共投資などの、政策効果によるところが大きい。


失速なら本末転倒


 今の日本経済の姿は、内需主導の自律的な回復にはほど遠い。7―9月期は、補正予算の効果が表れてプラス成長を維持するとの見方が大勢だとはいえ、経済対策の効果が薄れたならば景気は再び悪化する、と予測するエコノミストも多い。

 景気の腰折れを防ぐには、本来、切れ目ない景気対策を断行することが求められる。選挙公約を実現するために、いたずらに地方を混乱させ、景気を失速させるようなことになれば、本末転倒と言わざるをえない。

 来年度予算の編成作業を考慮すれば、補正予算の組み替え作業にかけられる時間は、そう多くはないはずだ。地方との調整に時間がかかれば、凍結方針そのものに対しても、国民から批判を浴びることにもなろう。

 次期政権の決断と実行力が、早くも試されている。

(公明新聞:9月15日)