鳩山政権 多難な船出<下>

“看板政策”実現に疑問
子ども手当財源不透明、高速無料化6割反対

「国民の家計を刺激する施策を真っ先に行い、期待が持てる政策をいち早く実現したい」。鳩山由紀夫首相は16日の就任会見で、民主党マニフェストで掲げた“看板政策”の実現を強調したが、多くの公約は「財源確保や目標達成が疑問視」(読売)されている。

その代表格が、中学卒業までの子1人当たり一律に月額2万6000円支給する「子ども手当」の財源問題だ。所得税配偶者控除と扶養控除の廃止分(合計1・4兆円)を財源に充てても、完全実施に必要な5・3兆円には足りない上に「無駄遣いの排除などで工面できるかは不透明」(日経)との見方が強い。

高速道路料金の無料化は、完全実施により、「料金収入がないと、年1・3兆円にのぼる建設費などの借金返済や、年6千億円の維持管理費を税金で賄う必要」(産経)がある。

さらに、自動車利用者が急増し、二酸化炭素の排出量が約3割増えるとの国土交通省の試算もあり、環境面への悪影響が懸念される。新聞各社の世論調査でも、無料化反対の意見が軒並み約6割に上り、無料化によるプラス面よりマイナス面を心配する国民が多いことが浮き彫りになっている。

ガソリン税など暫定税率廃止には、国税で約1・7兆円、地方税で約8000億円の税収が目減りするため、地方自治体から猛反発の声が上がっている。読売新聞が全国47都道府県知事を対象に、高速無料化と暫定税率廃止についてアンケート調査を実施したところ、「二つの政策を『すべき』と肯定した知事は、いずれもゼロだった」(読売)。

農家への「戸別所得補償制度」にも、首をひねる専門家が多い。経済産業研究所の山下一仁上席研究員は、(1)農産物の生産目標を誰が設定するのか(2)農家にどう割り当てるのか(3)生産目標を達成したかどうかの確認作業(4)補償の財源――などが不明確だとし「実現には多くの難題がある」(読売)と批判している。

一方、鳩山首相献金偽装問題もくすぶる。首相は就任会見で「私なりに修正、訂正した。もっと説明を尽くす努力をしたい」と釈明したが、「政権を揺さぶるアキレス腱」(朝日)にもなりかねない。西松献金事件で起訴された小沢一郎民主党幹事長の公設秘書の初公判を控え、「政権の両輪となる首相と幹事長が、政治資金問題を抱えたままの政権発足も異例」(東京)だ。いずれも十分な説明が急がれる。

朝日新聞衆院選直後に実施した世論調査で、民主党大勝の主な理由を「政策の支持」と答えた人は、「政権交代願望」の81%に対して、38%にとどまった。鳩山政権が、必ずしも多くの国民の支持を受けていないマニフェストの政策をどのように実現していくのか。しっかりと見極めていく必要がある。
(公明新聞:9月19日)