八ッ場ダム 地元の声聞く

生活再建と完成に期待
国交相の対応批判「一方的中止、民主的でない」
山口代表ら視察

公明党山口那津男代表、斉藤鉄夫政務調査会長は22日、党八ッ場ダム問題対策委員会(高木陽介委員長=衆院議員)のメンバーとともに群馬県長野原町を訪れ、前原誠司国土交通相が建設中止を明言した八ッ場ダムの地元住民らと意見交換した。大口善徳衆院議員、加藤修一参院議員(党群馬県本部代表)らが同行した。

八ッ場ダム利根川の洪水対策や水道・工業用水の供給、発電などを目的に1952年に計画が発表され、総事業費4600億円のうち、すでに70%を超える3210億円を執行。道路、鉄道の移設や住民の移転先の造成も進んでいる。

だが、前原国交相が同ダムの建設中止を明言したことから、ダム湖畔に立つ温泉宿など、ダム建設を前提に生活再建を描いてきた住民の間に動揺が広がっている。

意見交換会の席上、群馬県の大沢正明知事は前原国交相の一方的な中止表明に対し遺憾の意を表明。その上で、国と地元との合意協定が結ばれた95年当時、前原国交相が、さきがけの衆院議員として政府・与党の立場にあったことを指摘し、「(自民・社民・さきがけ政権の)政府と契約したものを、民主党政権になったら一方的に中止する。これで地方は国を信用できるか」と批判した。

長野原町の高山欣也町長は、町民は苦渋の決断でダム建設を受け入れたと強調。前原国交相が23日にも現地で意見交換会を行う意向を示していることについて、「結論ありきではなく、白紙の状態での訪問を繰り返し要請してきたが、中止の方針は変わらないという。住民の対策委員会とも相談した結果、全員一致で意見交換会には出席しないことを決めた」と述べた。

また連合対策委員会の萩原昭朗委員長も、洪水対策の面から「日本の中枢である首都圏を洪水から守るために必要なダムだ」と指摘。そのほか、「民主党の対応は民主的なやり方ではない」「民主党マニフェスト至上主義だ」といった批判が相次いだ。

これに対し山口代表は、「住民との間のルールを経ないで中止を決断するのは許されない」と応じた。

その後、一行はダムに沈む河原、住民や温泉街が移転する造成地などを視察。事業の進ちょく状況などについて説明を受けた。

視察後、山口代表は記者団の質問に答え、「(住民は)生活再建とダムの完成を期待していると感じた」と指摘。前原国交相に対しては「(代替地で)実際に生活が始まっているところや、温泉の(移転)予定地をよく見てほしい。結論ありきではなくて、白紙の状態で、住民の意見を聞いていただきたい」と述べ、住民の声に誠実に耳を傾けるべきだと訴えた。
(公明新聞:9月23日)