困窮する父子家庭も対象に

所得に応じた普遍的なサポート必要

児童扶養手当


 ひとり親家庭に対する支援策の柱の一つに児童扶養手当がある。母子家庭や児童を養育する祖父母など(一定の要件あり)に支給される制度だが、父子家庭は対象外だ。


 しかし、今の日本社会では困窮する父子家庭が増えており、公明党児童扶養手当制度の抜本的な見直しを政策に掲げている。母子か父子かといった違いではなく、所得に応じてサポートしていく普遍的な制度へと改めるべきだ。


 また、ひとり親家庭全体について、経済支援の底上げが望まれる。


 1962年施行の児童扶養手当法の目的は、第1条に、父親と生計が同じでない家庭の児童福祉の増進とある。背景には、父親には経済力があり、父親と生計が同じであれば安定した生活が確保されるとの認識があったと考えられる。


 だが、法施行から半世紀近くがたった今、男性を取り巻く雇用環境は大きく変化。終身雇用は標準モデルではなくなり、非正規労働が増加している。ましてや離婚や死別などで、小さな子どもを養育することになった父子家庭の父親は、祖父母などが同居していれば別だが、残業や出張などが困難であるため、リストラや転職を余儀なくされるケースが多く、十分な生活費が得られずに苦闘している。


 しかも、母子家庭と同水準の所得であっても、母子家庭を対象とした児童扶養手当や無利子・低利の貸付制度、正社員としての就職に役立つ高等技能訓練の支援策などは利用できない。医療費の助成も課題だ。


 近年、こうした切実な父子家庭の実態を受けて、国に先行して、父子家庭の経済支援に乗り出す自治体が増え始めた。


 例えば、埼玉県新座市は2009年7月から、「父子家庭生活応援手当」を創設した。公明党が同年3月の定例議会で父子家庭に対する経済支援の必要性を訴え、実ったものだ。


 同生活応援手当は、支給額も所得基準も支給方法も児童扶養手当と同じ。所得に応じて、児童が1人の場合であれば月9850円から最大で月4万1720円まで支給される。2人目の児童は5000円、3人目以降の児童は1人につき3000円が加算される。支給月は4月、8月、12月の年3回で4カ月分がまとめて振り込まれる。


 公明党は、国政においては08年2月の衆院予算委員会分科会で、「父子家庭も児童扶養手当の支給対象にすべきだ」と強く訴えている。


子どもの福祉が原点


 05年の国勢調査によれば、父子家庭は全国で約9万2000世帯。父子家庭は収入の平均値をとれば、母子家庭の約2倍だが、年収300万円未満の世帯が37・2%を占める(07年発表の厚生労働省調査)。


 原点である児童福祉の観点から、父親または母親がいない世帯でも、子どもが安定した生活のもとで健やかに成長できるよう、児童扶養手当の改革が求められる。
(公明新聞:9月30日)