迫る地デジ移行 現状と課題<下>

受信障害対策がカギ
都市部の難視世帯 国が責任ある対応を

地デジ普及に立ちはだかるのが受信障害問題。山間部だけの問題と思われがちだが、高層ビルの多い大都市圏にも“死角”がある。共同受信施設を地デジ化するか、個別対応か。住民は選択を迫られている。


草の根の説明


 「地デジはアナログより電波が強いので建物による受信障害はかなり解消されます」。9月22日、東京都台東区内で開かれた総務省テレビ受信者支援センターデジサポ)主催の地デジ説明会で、担当者はこう説明した。


 参加者は約30人。ビルやマンション所有者が多く、説明会後の個別相談コーナーでは、1時間近く質問する人も。同省は今年度末まで、全国各地で地デジ説明会を7万回開催。“草の根レベル”で地デジへの理解と個別の相談に応じている。


進まぬ協議


 総務省の調査によると、ビル陰で視聴困難な住民(約606万世帯)が利用する共同受信施設は全国で約5万施設。このうち、地デジ対応済みは約5600施設、全体の約11・4%にとどまる(3月末時点)。


 当事者間による協議次第で共同受信施設の地デジ化は実現可能だが、改修費用の一部を折半する形で負担する場合が多い。都内のビル陰の一軒家に住む主婦は「近所の結びつきが薄いからね……。面倒だし個別対応にしようかな」と漏らす。


 一方、全国で約200万棟、約1900万戸ある集合住宅はどうか。総務省の推定によると地デジ対応率は約7割を超えている(3月時点)。しかし、地デジを想定していない古いマンションは、施設改修費用がさらにかかる可能性もある。


円滑な移行へ


 公明党は、実態調査や国会質問などを通じ、集合住宅やビルの所有者に過度の費用負担が生じないよう支援策を提言。また、地デジ移行のための中継局が新設された一部地域で新たな受信障害が発生している現状を受け、きめ細かな受信障害対策を主張してきた。


 これを受け、総務省は、集合住宅や受信障害の共同受信施設を改修する費用の一部助成制度を創設。地デジ移行に伴う受信障害地域の調査事業も拡充した。


 さらに、ビル陰の受信障害共同受信施設の地デジ化を促進するため、法律相談窓口を開設。9月28日から都内のデジサポで受け付けを始めた(都内以外は10月中旬以降、順次受け付けを開始)。 


 原口一博総務相は18日の記者会見で、2011年7月の地デジ移行について「何が何でもそこで実施する」と延期の可能性を否定した。地デジ完全移行まで、きめ細かな対応がますます求められている。
(公明新聞:9月30日)