補正の執行停止に不安拡大

円高容認」発言で為替市場が混乱

新政権と日本経済


 鳩山政権がスタートして2週間が経過したが、この間、日本経済は大きく混乱、内外に不安が広がっている。


 来年夏の参院選をにらんで、新政権は民主党マニフェストに盛り込んだ「子ども手当」「高校無償化」「高速道路無料化」などの早期実現をめざしているが、これには巨額の財源が必要だ。「ムダな歳出カット」だけで生み出されるはずはなく、2009年度補正予算の一部執行停止を打ち出した。総額14・3兆円のうち、約3兆円の財源をねん出するという。首相は、きょう2日までに執行の是非を検討するよう指示しているが、全体像が明らかになるまでにはまだ時間がかかりそうだ。


 すでに補正予算に盛り込まれた国の経済対策を前提に予算を組んだ自治体にとっては、事業の執行に支障が出ている。関係する地域の業者も、予算をあてにして準備を進めてきており、雇用の悪化をもたらす恐れも強い。地域経済に深刻な影響をもたらすことから、地方議会では補正予算の執行を求める意見書可決の動きが広がっている。


 新政権による日本経済への打撃は、補正予算の執行停止問題だけではない。藤井財務相や亀井郵政・金融担当相の発言も大きな波紋を呼んでいる。


 「円高論者」として知られる藤井財務相は就任前のインタビューで「日本は基本的に円高がよい」と断言、就任後も「(円高になっても)介入はあり得ない」などと“円高容認”発言を繰り返した。これが投機筋の格好の餌食となり、9月28日午前、ドルは週末から一気に3円を超す急落(円高)となり、88・23円と8カ月ぶりに安値を更新した。驚いた財務相は同日午後、「(円急騰に)やや一方に偏っているとの印象を持っている」とようやく、これまでの発言を軌道修正した。


 先進各国が景気対策を最優先し輸出の縮小を避けるため、自国通貨高を防ごうと懸命になっているなかで、「円高容認」「介入せず」の発言は問題だ。不用意な発言で市場を混乱させることは許されない。


 一方、亀井金融相は、中小・零細企業や個人に対する借入金の返済猶予制度(モラトリアム)を提唱、検討チームの作業を開始すると明言している。中小・零細企業への貸し出しは地方の金融機関が担っている場合が多く、経営への影響は大きい。モラトリアムによって、新たな貸し渋りが起きる事態も指摘されており、資金が必要な企業に回らなくなるという逆効果を招く可能性もある。政府部内でも意見が分かれている模様で日本の金融への信頼が揺らぎかねない。


株式市場に冷や水


 亀井金融相のモラトリアム発言によって銀行株は急落、藤井財務相円高容認と相まって底堅い動きを示していたわが国の株式市場は冷や水を浴びせられた。鳩山首相はこうした混乱を放置せず、経済の回復に全力を挙げてもらいたい。
(公明新聞:10月2日)