デフレは何が問題?

問い 最近、テレビや新聞で「デフレ懸念が強まっている」という報道を見聞きしますが、何が問題なのでしょうか。 (東京都 Y・M)


物価下落で経済縮小
悪循環に陥れば脱却は困難


 デフレとは「デフレーション」の略で、物価が下がり続けることです。物価が上がり続ける「インフレーション(インフレ)」の逆の現象です。


 8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2・4%下落。比較可能な1971年以降、下落率は4カ月連続で過去最大を更新しました。モノやサービス価格が軒並み下がり続け、デフレ圧力が強まっています。


 物価が下がり、モノが安く買えるというのは良いことのように思えますが、そうではありません。実際、小売業などでは利益を期待できないほど過激な“安売り競争”に拍車が掛かっています。値段が下がるということは、企業が儲からないということです。そうなると、企業で働く従業員の給与が上がらない↓消費が冷え込む↓売れないから値段が下がる↓企業が儲からないという悪循環に陥ってしまいます。これを「デフレスパイラル(デフレの螺旋)」と呼びます。


 この悪循環がすでに始まっている恐れがあることを、最近の経済指標が示唆しています。


 例えば、8月の毎月勤労統計調査では、現金給与総額(1人平均)が15カ月連続で減少しています。8月の完全失業者数も、前年同月比89万人増の361万人で10カ月連続で増加しています。さらに2009年の基準地価では、全調査地点2万3024カ所のうち上昇したのは、わずか3カ所と、調査開始以来、最も少ない結果となりました。これらのデータはすべて日本経済が少しずつ縮小していることを示しています。


 日本で戦後初めてデフレが始まったのは99年ごろからとされ、政府が正式に認定したのは01年3月です。その後、デフレを脱却したのは5年4カ月後の06年7月でした。デフレの悪循環が始まると、なかなか抜け出せなくなります。その時期の消費者物価指数の前年同月比の下落率は1%(01年5月)が最大で、比較的緩やかだったことに救われた面もあります。しかし、今回は下落率が2%台と非常に大きいのが特徴です。前回よりも長期化し、深刻化する恐れがあります。


 内閣府の推計では、供給に対し需要が年換算で約40兆円も不足している上に、円高基調による輸入物価の下落などもデフレを加速させます。


 菅直人副総理兼国家戦略担当相は「(物価下落が)続くとすれば、デフレに逆戻りする懸念もある」と表明しましたが、そもそも、景気を本格的な回復軌道に乗せる成長戦略を描き切れていないのです。鳩山政権には、経済運営に対する危機感が薄いと言わざるを得ません。
(公明新聞:10月10日)