積極的な政策で危機脱出を

補正の執行停止は地域経済を直撃

厳しい雇用情勢


 東京株式市場での日経平均の続伸など、景気回復の兆しが見えるなか、雇用情勢は依然、厳しい状況が続いている。


 今月初め発表された労働力調査(8月分)によると、完全失業率こそ5・5%と前月に比べ、0・2ポイント低下したものの、完全失業者数は361万人で、10カ月連続の増加を記録した。


 厚生労働省が発表した有効求人倍率(8月分)も、0・42倍と4カ月連続で過去最低を更新しており、事業主の都合で離職しハローワークを訪れた休職者数は前年同月比で76・6%も増加している。


 このほか、日銀短観(9月調査)では全産業で雇用の過剰感は高水準のままだ。


 今回の世界経済危機で、雇用削減の直撃を受けているのは、アルバイトや派遣社員など非正規労働者である。労働力調査によると、非正規労働者(2009年4―6月)は、前年同期比47万人減少、正規労働者の減少数(29万人)を大きく上回っている。


 雇用の回復は経済の回復に遅れて進行するとはいえ、積極的な政策が求められていることは言うまでもない。来年には、現在の景気対策が息切れする可能性も指摘されており、強力な雇用対策が求められている。


 中長期的には、わが国の就業構造が変化し、建設業や製造業の雇用者数が減少、医療・福祉分野で増加していることから、前政権で強力に進めた医療・福祉分野への雇用拡大を促す政策が必要だ。


 同時に、景気回復まで企業が雇用を維持できるよう支援しなければならない。公明党が拡充に全力を挙げてきた雇用調整助成金は、雇用対策の柱として機能している。3月30日から、派遣労働者を含む労働者の解雇がない場合、助成率を引き上げ、残業時間を削減して雇用を維持した場合に助成を行うなど、大きく前進させた。対象者数は現在、230万人を超えている。


 鳩山政権には、引き続き、派遣労働者保護の強化や雇用創出対策、再就職支援など着実な取り組みが求められている。


 ただ、ここに来て、雇用の維持に暗雲が漂っている。16日の閣議で、09年度補正予算のうち2兆9259億円が執行停止になることが決まり、一部の公共事業などの執行が停止されるからだ。国の決定に対応して予算を計上している自治体の混乱は避けられず、公共事業の停止は地域の雇用を直撃する恐れもある。


カギ握る経済成長


 さらに、新政権は、成長戦略が明快ではない。安定的な経済成長こそ雇用創出の王道だが、企業に新たなビジネスや技術革新を促す視点は見えてこない。通貨供給量の拡大など日銀の協力を得ながら、成長重視によって雇用拡大を実現してもらいたい。


 自ら景気回復の腰を折り、雇用に打撃を与えながら、“積極的な雇用対策”を宣伝するようなことがあってはならない。
(公明新聞:10月19日)