国民の失望と地方の反発招く

政策変更の理由と判断基準を示せ

子育て手当の凍結


 政府が2009年度補正予算に盛り込まれた「子育て応援特別手当」の凍結を決めたことに対し、国民の失望と地方の反発が強まっている。


 同特別手当(対象予定者=330万人)は、3〜5歳児を対象に1人当たり3万6000円を支給する予定だった。公明党が強力に推進し、すでに欧米諸国では実施されている幼児教育無償化への「第一歩」として期待されていた。


 政府の凍結決定について、公明党山口那津男代表は「子育て応援特別手当の執行停止は、当てにしていた人の生活困窮をもたらし、失望を与える」と同特別手当を期待していた子育て世代の人たちの思いなどを代弁し、「こうした乱暴な政府のやり方に対して、全国知事会も懸念を示している」と厳しく批判した。


 政府は、子育て応援特別手当の政策変更の理由とともに、執行停止の判断基準についても、国民に説明する責任がある。


 凍結方針段階から、自治体の反発は強かった。一部の市町村では既に申請手続きが始まっている。また、子育て応援特別手当の事業費は全額国費(1254億円)だが、自治体が支出済みの事務費などは計88億円に上り、さらに凍結に伴う事務費や広報費用も必要になる。


 地方の負担増にどう対応するかについては、当初、政府内でも意見が分かれ、原口総務相は子育て応援特別手当の凍結に難色を示していた。


 全国知事会など地方6団体も「地域主権をうたう新政権への期待を損なうものだ」との抗議声明を提出。「突然かつ一方的に執行を停止することは、住民や自治体に大きな混乱を与える」とし、強い懸念を示した。


 一方、兵庫県三木市のように同特別手当を市独自に支給すると発表した自治体もある。支給凍結による市民生活の混乱を防ぐためで、藪本市長は「地方自治体の実情を一切考慮せず、公約を実現するための財源確保のみを考えた行為だ」と猛烈に批判している。


参院選対策が目的か


 政策を変更した理由と、その判断基準もあいまいなままだ。公明党高木陽介幹事長代理は「(子育て手当は)公明党が主張したからやめるというような閣僚の発言があったが、看過できない」とし、「執行停止の基準を明らかにするべきだ」と指摘した。当然のことである。


 厚生労働省は、同特別手当を凍結したことで、補正凍結による削減総額として6314億円を確保。その分を子ども手当などの財源に回し、同手当を来年6月から支給するという。


 公明党が推進した同特別手当に対し、子育て世代や地方の反対を押し切ってまで強引に凍結し、民主党が主張する子ども手当参院選の直前に実施するというのでは、「選挙対策が目的」と言われても仕方がないのではないか。政府は、26日召集の臨時国会で、こうしたさまざまな疑問点に対し、国民に真摯に説明すべきだ。
(公明新聞:10月21日)