民主マニフェスト 実現至上主義に混乱広がる

整合性欠く政策転換に国民は迷惑

民主党の「マニフェスト実現至上主義」で混乱が広がっている。「子ども手当」「高速道路無料化」「温暖化ガスの25%削減」など、鳩山政権はマニフェストに掲げた公約実現に突進しているようだ。だが、景気回復をめざした補正予算の一部執行停止に見られるように、景気対策を犠牲にした「最初にマニフェストありき」の姿勢は、国民生活を脅かす。


 民主マニフェストをめぐる各種世論調査では、「天下り根絶に賛成73・0%」(時事通信社)など、国民の支持を得ているものもあるが、「高速道路無料化」のように、「72・8%が否定的」(産経・FNN)というような事例もある。


 もともと、英国の総選挙をモデルにしてスタートしたマニフェストだが、わが国ではまだ、理念に基づいて一貫した政策が展開されず、ともすれば、有権者受けする公約の提示になっている、との批判もある。


 例えば、「高速道路無料化」は温暖化ガス排出を増大させ、温暖化ガス削減と調和しない“政策”である。自動車利用を促進するが、他の公共交通機関の顧客を奪い、経営に打撃を与える。


 すでに、日本バス協会をはじめ、JR7社や日本旅客船協会などの業界団体が相次いで反対を表明していることからも、影響の深刻さがうかがえる。


 「温暖化ガス25%削減」の重要性は言うまでもないが、世界の排出量の4割以上を占める米国と中国を同調させなければならない。企業からは「日本だけが突出して削減に走れば、国際競争力を削ぎ、海外への工場移転などを招きかねない」との不安の声も聞かれる。


 世界が驚く温暖化ガス削減目標を掲げる一方で、自公政権が進めた省庁への環境対応車の導入をストップするのは筋が通らない。補正予算に盛り込まれた“公用車をエコカーに”という試みは、目立った議論もないまま停止されてしまった。これでは、温暖化防止は口先だけだと受け取られても仕方がない。


 「郵政事業の4分社化見直し」というマニフェストの実現を急ぐ鳩山政権は、日本郵政西川善文社長を事実上、更迭し、企業経営の経験がない旧大蔵省出身者に交代させた。これは「天下り根絶」や「官僚支配の打破」という民主党の主張とは矛盾している。非効率な官製金融を改めようとした「官から民へ」の流れに逆行するようなことがあれば、国際的に日本の改革姿勢は疑われ、国益を損なうことになろう。


子育て手当も凍結


 さらに、マニフェストの「子ども手当」などの財源に回すため、一部自治体で申請手続きが始まっていた「子育て応援特別手当」の凍結も決定した。また、「米軍再編の見直し」によって、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題は混迷を深めている。民主党を支持した有権者も、マニフェストのすべてを支持したわけではない。国民の生活を最優先するべきだ。
(公明新聞:10月24日)