理念生かす具体像示さず

補正の執行停止で説明責任果たせ

首相所信表明演説


 首相就任から40日。この間、鳩山内閣は今年度補正予算の執行停止をめぐって、国民に不安を与え続けている。それにもかかわらず首相の所信表明演説には、国民が一番聞きたい具体的な説明がなかった。


 公明党山口那津男代表は「抽象的なレベルで言えば公明党がかねてから主張してきた方向性と同じようなことが随所に見られ、言い換えれば前政権とも似通ったところもある」とした上で、「内容が抽象的で情緒的だ」と批判し、「具体的にどう違うかを示す必要があった」と指摘した。


 これまで民主党は、歴代首相の所信表明に対し、「総花的」「具体論なし」などと言ってきたが、鳩山首相の演説も結局、そうした批判の範囲内であると言わざるを得ない。


 政権を担当するということは、日々の行政に責任を負うことだ。その意味からすれば、国会で議決された今年度の補正予算を、国会の閉会中に内閣の責任で執行停止にするという重大な決定をした以上、それについて、その理由を具体的に国民に説明する義務が首相にはある。


 例えば、鳩山内閣は子育て応援特別手当の執行を停止した。これは、不況下で子育て中の家計を直接支援するため、さらには欧米各国で実施されている幼児教育無償化への一歩として、公明党の強い主張で実現したものだ。


 ところが鳩山首相は、子育て応援特別手当など具体的な事業の執行停止理由に一切触れず、「約3兆円にも相当する不要不急の事業を停止させることができた」と自画自賛し、「この3兆円は、国民の皆さまからお預かりした大事な予算として、生活を支援し、景気回復に役立つ使い道へと振り向ける」と述べただけである。


 これでは、子育て応援特別手当を景気対策から見て「不要不急」と判断したと同じだ。現下の経済状況の厳しさに対する見識を疑わざるを得ない。子育て応援特別手当以外にも執行停止で困っている人は多い。


 「景気後退や、倒産におびえる中小・零細企業も多い。実際に起きていることに敏感さを欠いている」との山口代表の指摘に、首相は国会の場で説明責任を果たすべきだ。


献金問題の弁明なし


 日本が国連が求める「テロとの戦い」の一環として実施してきた、インド洋上での補給支援活動についても、鳩山首相は「単純な延長は行わず」と従来の見解を繰り返すばかりだった。


 アフガニスタン支援として民生支援を進める考えだろうが、民生支援は日本が既に進めてきた分野である。この分野の拡充さえすれば、もう一方の「テロとの戦い」の分野である補給支援活動から撤退してもいいと安易に考えているのであれば、国際的な信用を得られない。


 鳩山首相は、自らの個人献金問題についても納得のいく弁明をしなかった。「人には厳しく、自身には甘く」では、一国のリーダーの資格が疑われる。

(公明新聞:10月28日)