政府参考人制度 国会での幅広い論議を保障

行政チェック機能の発揮にも有益

政府参考人制度


 民主党が主張する政府参考人制度の廃止案に対し、国民から疑問の声が上がっている。


 政府参考人とは、国会の委員会が必要と認めたときに限って委員会に出席し答弁をする官僚のことである。民主党は、国会審議は大臣など閣僚と各委員会に所属する委員による“政治家同士の議論の場”であって、たとえ参考人としてでも官僚を参加させる必要なはいと考えているようだ。


 確かに政治家同士が法案をめぐって政策論を闘わせることは、国民に対する国会の政治教育機能(W・バジョット著『英国憲政論』1867年)を発揮させる上でも必要であることは今では広く支持されている。しかし、同時に、国会は立法だけでなく、政府の監視という「行政のチェック機能」も発揮しなければならない。これも当然のこととして認められている。


 その意味で、行政の執行状況について、委員会審議の場で詳細な説明を政府に求め、さらに追及することは国会の責任であり、政府参考人制度はそのためにも有益である。これを廃止すると、行政の現場で日夜仕事をしている官僚の“生の声”が国会で聞けなくなる。それでいいのだろうか。


 公明党山口那津男代表は先月30日の参院代表質問で「官僚答弁の禁止は国民主権の下、『国権の最高機関』である国会の審議制約につながる」と強調。その上で、「国会の幅広い論議が保障される必要がある」と訴え、法律による政府参考人制度廃止の考えを批判した。


 政治家同士の議論を活性化させる目的は、国会審議の質を高めるためである。質向上に必要であれば、官僚を委員会審議に出席させることは何の問題もない。この制度を廃止すれば、逆に、大臣が行政の“生の声”を国会から遠ざけるための防御壁にもなりかねない。


議院内閣制の理解必要


 かつて政府は、国会の委員会審議に臨む大臣を補佐するため、官僚を政府委員という名で出席させ、説明役として使った。政府委員は省庁の局長級の官僚が務め、委員の質問の大半に率先して答弁していた。よく知られた話であるが「これは重要なことなので政府委員に答弁させます」と発言し、ひんしゅくを買った大臣もいた。


 こうした“官僚答弁”多用の反省から、1999年に成立した「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」によって政府委員制度は廃止された。しかし、この歴史から、官僚を国会から排除することが国会審議の活性化につながると考えたのであれば、国会に立法とともに行政監視の責任を担わせている議院内閣制についての理解が浅すぎると言わざるを得ない。


 与党・社民党の重野幹事長も「あえて法律を変えてまで役人の答弁を禁止することは多様な言論を担保する国会の場でいかがなものか」と述べた。この疑問にどう答えるのだろうか。
(公明新聞:11月6日)