アフガン再建へ試練の船出

汚職一掃と治安回復で信頼取り戻せ

カルザイ第2期政権


 嵐の中の船出である。“カルザイ船長”の航海術がこれまで以上に試されることになろう。国際社会も引き続き全力で支援に当たりたい。


 混乱に次ぐ混乱の末に再選されたアフガニスタンカルザイ大統領が、ようやく2期目の政権をスタートさせた。


 8月20日の第1回投票から3カ月。この間、カルザイ陣営の選挙不正が次々と明るみに出て、第2期カルザイ政権の正統性は、出だしから損なわれた格好だ。多難な前途を予感せざるを得ない。


 アフガン復興の足を引っ張っているのは、政権内にはびこる汚職体質と治安の悪化だ。この二つの課題の克服がない限り、アフガンの政情安定はなく、国際テロの撲滅もあり得ない。政権の求心力を高めるためにも、カルザイ大統領はよほどの覚悟を決めて、この二つの難題に取り組む必要がある。


 19日の大統領就任式では、カルザイ大統領は「刷新を図る」ことを宣言し、汚職や麻薬取引の一掃を表明した。


 だが、どれだけ言葉を弄しても、現実に親族や側近の不正行為が絶えない以上、国民の不信感を拭い去ることはできない。国際社会の批判も高まるばかりだ。失墜した信頼を回復するには、目に見える形で汚職を追放する以外にないことをカルザイ大統領は肝に銘じてほしい。


 治安回復の兆しも一向に見えてこない。旧支配勢力タリバンは首都カブールに迫るまでに勢いを回復し、今や中央政府の力の及ぶ範囲はカブールだけといわれるほどだ。駐留外国部隊と一般市民の犠牲者も、過去最悪のペースで増え続けている。


 こうした中、オバマ米政権は、アフガンへの兵力増派を検討する一方、包括的な支援を話し合うための国際会議を開く準備に入ったとされる。ブラウン英首相も、アフガン政府に治安権限を移譲する工程表づくりに着手する方針を示し、来年1月にロンドンで「アフガン出口戦略」を協議するための国際会議を主催する用意があることも明らかにした。


 本格的な治安回復を目指す国際社会のこうした動きに合わせて、カルザイ政権も国軍や警察など自前の治安組織の育成に一層の力を注ぐことが重要だ。


問われる日本の支援策


 日本の支援も問われている。


 鳩山政権は、国際社会から高く評価されてきたインド洋上での補給支援活動を来年1月に打ち切り、向こう5年間で50億ドル(約4500億円)規模の民生支援を実施する方針だ。


 だが、日本はこれまでも、米英に次ぐ額の民生支援を続けてきたところであり、今回の支援策に格別の新味があるわけではない。


 むしろ、補給支援活動の中止によって、「金を出すだけの小切手外交」との批判を招き寄せないか、不安が募る。


 補給支援活動の継続も含め、より実効性ある支援モデルを今こそ日本から世界に示していきたい。
(公明新聞:11月24日)