「公訴時効廃止」の願い実現を

国民の理解拡大へ きょうスタート

犯罪被害者週間


 きょうから「犯罪被害者週間」が始まる。最終日の12月1日には東京都内で「国民のつどい中央大会」も開催される。


 誰でも犯罪に遭う可能性はある。その不幸を被害者自身や遺族、家族にだけ背負わせるような社会であってはならない。


 2004年成立の犯罪被害者等基本法は、犯罪被害者とその家族や遺族の「権利利益の保護」を目的に掲げ、国と地方自治体に支援の責務を課すと同時に、国民に対しても、犯罪被害者らの名誉を守り、生活の平穏を害することのないよう十分に配慮することを求めている。


 犯罪被害者の願いは「一日も早く元の生活に戻ること」と聞く。だが、それがなかなか叶わない。被害の苦しみに関する周囲の無理解や好奇の目が、立ち直りを阻害する。それを取り除くには、国民一人一人が犯罪被害者への理解・配慮・協力を深める以外にない。この週間は、犯罪被害者が平穏に生きていける社会をつくることが目的である。犯罪被害者の苦しみは想像を超えるが、その一端でも知る努力をしたい。


 犯罪被害者等基本計画(05年12月閣議決定)が示した258施策は着実に進んでいるが、その中にない、殺人など重大事件に関する公訴時効の廃止が今、新たな課題となっている。


 公訴時効とは犯罪を行っても一定期間逃げ通したら裁判をすることができなくなる制度で、殺人罪の場合、25年で公訴時効となり処罰できなくなる。


 法律がこの「逃げ得」を認めた理由は、(1)時の経過で証拠が散逸し裁判が困難になる(2)時の経過で被害者と社会一般の処罰感情が薄れる(3)犯人が処罰されずに時が経過したという“事実”を尊重すべき――の3点であり、通説となっていた。


 しかし、この理由には犯罪被害者の視点が欠けている。


公明党も実現に全力


 公明党法務部会は6月、この問題で全国犯罪被害者の会あすの会)から意見を聞いた。


 「証拠の散逸は犯人側だけを一方的に不利にするわけではない。犯罪を追及し、立証責任を負う検察も不利になる」


 「時の経過で処罰感情が薄れることはない」


 「犯罪被害者には近くに犯人がいるのではないかとの不安感がある。時効前なら逮捕の期待もあるが、時効になると誰も相手にしなくなる。一生、不安感をもって生きなければならない。この犯罪被害者の“事実”状態と、犯人の“事実”状態のどちらを守るべきなのか」


 同基本法が施行されている現在、公明党は、政府がこうした視点に正面から向き合う必要があると考え、公訴時効の廃止を強く主張してきた。


 法務省の勉強会は7月、重大事件に関する公訴時効の廃止を内容とする報告書を公表。千葉法相は先月28日、法制審議会に公訴時効「見直し」を諮問した。犯罪被害者の視点を刑事法制の中に確立させるためにも、「廃止」の答申を期待したい。
(公明新聞:11月25日)