哲学と戦略なき「縮減」「廃止」

事業仕分けに関係団体が怒りの声

文化芸術予算


 わが国が歩むべき「文化芸術立国」への道を、鳩山政権は否定しているのだろうか。


 政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で、多くの文化芸術関係予算が縮減・廃止すべきと判定された。


 これに対し、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)など関係者からは「芸術の公共性についての認識が欠如している」「充実してきた文化芸術政策の形成を無に帰すもの」など、哲学と戦略なき仕分けに反発し、今後の文化芸術振興を危惧する声が相次いでいる。


 具体的には、日本芸術文化振興会を通じた事業では、芸術家や団体の活動を支援する「芸術文化振興基金」や、地域の拠点となるホールなどでの制作公演などを支援する「地域の芸術拠点形成事業」が圧倒的縮減と判定された。これまでバレエの森下洋子さん、演劇の野田秀樹氏らが参加してきた海外研修などの「芸術家の国際交流事業」も縮減となった。


 また、未来を担う子どもたちが本物の文化芸術に触れる機会を増やし、将来の人材育成に寄与する「伝統文化こども教室事業」や「学校への芸術家派遣事業」は、「国の事業としては行わない」として、廃止(地方へ移管)とされた。


 驚くことに、これらの事業に対して仕分け人からは「芸術は自己責任」「そもそも文化振興は国の責務か、民間中心で行うか、議論が必要」「人材育成は不要」などの乱暴な意見表明が続出した。


 だが、民間の商業ベースばかりに委ねていたら、文化芸術の振興は果たせない。欧米諸国でも国が積極的に支援しているのは、このためだ。また、厳しい財政事情にある自治体に押しつけるのも言語道断といえよう。


 戦後長く「経済大国だが文化小国」と世界から揶揄されてきた日本が文化芸術施策に力点を置くようになったのは、公明党が主導的役割を果たした文化芸術振興基本法の施行(2001年12月7日)からである。


 芸団協の野村萬会長は本紙への寄稿で、今回の事業仕分けについて「費用対効果のみを優先した廃止・削減」と憂慮。その上で、「文化芸術事業には、どうしても中長期的視点に立った支援が必要不可欠」とし、「民間や地方に任せるのではなく、国の責任において、文化芸術立国をめざす政策を期待し、要望する」と述べている。


指弾免れない民主党


 今回の事業仕分けを主導した民主党は、マニフェストで「芸術文化・コミュニケーション教育の充実」「伝統文化の保存・継承・振興」を掲げている。まさに自語相違であり、整合性を欠くものとの指弾を免れない。


 公明党は来年度予算要望に向け、文化芸術関係団体からの意見聴取を重ねている。その中で示された「人間の成熟は文化芸術なくしてはあり得ない」(ピアニストの中村紘子さん)などの声を真摯に受け止め、「文化芸術予算を守っていく」(斉藤鉄夫政務調査会長)決意だ。
(公明新聞:12月15日)