憂慮される日本政治の劣化

首相の力不足のツケは結局、国民に

鳩山政権3カ月


 この間の歩みをどう形容すればいいのだろうか。「迷走」でもあり「暴走」でもあり、はたまた「停滞」「後退」の日々でもなかったか。日本政治の劣化を憂えないわけにはいかない。


 鳩山政権が発足してちょうど3カ月が過ぎた。


 マスコミ各社の世論調査によれば、今なお50%台の高支持率を保っているとはいえ、80%台にも上った政権発足当初のあの勢いはすっかり影を潜めた。わずか十数%だった不支持率は30%台にハネ上がっている。「せっかく高い期待を寄せたのに」との国民の“恨み節”“嘆き節”が聞こえてくるようだ。


 “失速の90日間”を振り返るとき、まず浮かび上がるのが、首相その人のリーダーとしての資質の問題だ。沖縄の米軍普天間基地移設問題をめぐる迷走も、来年度予算編成や経済対策をめぐる閣内の混乱も、結局は首相の力量不足という一点に集約できよう。決断力、調整力、指導力、構想力など、およそトップに立つ者に不可欠な資質のことごとくが、この人には決定的に欠けているように見える。


 早くもひび割れ現象を起こしている与党3党の連立のひ弱さにもあきれるばかりだ。国民新党社民党はそれぞれ持論に固執し、これに民主党が振り回されている格好だが、対策が後手後手に回れば、結局そのツケは国民が払うことになる。迷惑この上ない話である。


 政権発足前から付きまとっていた首相の偽装献金疑惑も深まる一方にある。当初、「個人」ならぬ「故人」の献金問題として表面化したこの問題は、ついには母親からの資金提供疑惑という異様な事態にまで発展している。その額、実に11億円超というのだから驚かされる。


 常識外れのこの巨額資金が一体何に使われ、どう処理されたのか。「すべて検察任せ」ではもはや済まされない。首相は自ら進んで事実確認し、きちんと説明すべきだ。同じことは、西松建設に続く新たな献金疑惑が浮上している民主党小沢幹事長にも言っておきたい。


理念もビジョンもなく


 劇作家の山崎正和氏が月刊誌「潮」で指摘している通り、鳩山政権は「政権交代そのもの」が目的の政権として生まれた。「政権交代して何を目指すのか」ではなく、「政権交代を自己目的化していた政権」と言い換えてもいいだろう。その意味ではこの3カ月間、鳩山政権が一貫した理念や中長期の展望を示すことなく、迷走と停滞に終始したのは当然のことだったのかもしれない。民主党主導政権の限界と言っていいだろう。


 とはいえ、景気は二番底を打つ懸念が増し、「鳩山不況」が現実味を帯び始めている。普天間問題は日米同盟の危機にとどまらず、「基地固定化」という最悪の結果を招きかねない事態にある。この際、首相には日本の将来ビジョンや成長戦略を描けとまでは言うまい。せめて現下の問題だけでも、一歩前進の駒を進めてもらいたい。
(公明新聞:12月16日)